障害を持つ弟の世話に父のDV、母の自殺未遂。凄絶すぎる幼少期を送った40代女性が、人生を切り開くことができたきっかけは?
虐待サバイバー、毒親育ち、ヤングケアラー、宗教二世など。特殊な環境のもとで育ち、世間的に健全とされる幼少期や思春期を過ごすことができなかった人たちの実態が近年知られるようになりましたが、それらを複合的に抱えてしまった人の存在や経験談を見聞きしたことはあるでしょうか? 『きょうだい児 ドタバタ サバイバル戦記』冒頭エピソードを試し読み! そのような想像を絶する状況を克明に記したのが、『きょうだい児 ドタバタ サバイバル戦記 カルト宗教にハマった毒親と障害を持つ弟に翻弄された私の40年にわたる闘いの記録』というコミックエッセイです。 著者の平岡葵さんは、重度の障害を持つ弟のいる「きょうだい児」でありながら父親のDVや母親の自殺未遂にも悩まされるなど、針のむしろにいるような幼少期を送った40代女性で、本書ではその状況をどう打開してきたかをつづっています。 とはいえ、一つ一つの描写はコメディタッチであるため陰鬱な気分に陥ることはないのですが、筆者はそれがかえって事態の深刻さを浮き彫りにしているようで切ない気持ちになりました。おそらく、ユーモアで包まなければ受け止められないくらい凄絶な状況だったのではないでしょうか。 このように、余白からもさまざまな情報を読み取ることができる本書の一部をここでご紹介します。 葵さんが1歳下の弟・まーちゃんの障害を知ったのは幼少期。他の同年代の子どもたちがどんどん話せるようになる中、まったく話せるようにならない彼の様子に違和感を覚え、それについて母親に聞いたことがきっかけでした。 母親の重苦しい表情から事態の深刻さを悟った葵さんは、幼いながらも責任感を覚え、人並みに話せるようにと弟に言葉を教えます。 しかし、重度知的障害、自閉症、強度行動障害を抱える弟の教育は一筋縄ではいきません。まったく予測のつかない彼の行動に、葵さんは振り回されていました。 「きょうだい児」としての宿命を背負った葵さんは、小学校に上がる前から弟の世話に明け暮れます。今で言うところの「ヤングケアラー」になってしまった背景には、両親には頼れないという切実な事情がありました。