彼らがパリから京都へ移り住んだ理由。
〝都〟から〝古都〟へ移住して店を開いた人たちに、住んでみてわかったこの街のさらなる魅力を聞いた。
ヴィンテージ古着とコーヒー、夫婦の「好き」を開く。
パリの地図を背景に、「京都は鴨川、パリはセーヌ川。どちらも街の中心を川が流れていて、憩いの場になっているところが落ち着きます。川の規模は全然違いますけど」と楽しげに話す、吉田明史さん。横にいるパートナーの林暖婷さん(リンさん)は、「私は台南出身で、路地が多いところが京都に似ています」と微笑む。 上の写真はリンさんが担当するカフェ、奥には吉田さんがパリで買いつける物語のある古着を置く。五条の古民家を改装し、2023年10月にオープンした。
夫婦の出会いは、吉田さんが13年間暮らしたパリ。夫は服飾の勉強に、妻はフルートの留学に。アルバイト先の飲食店が隣同士だったことから顔見知りになり、吉田さんのパリの骨董市を巡る趣味の集まりに、骨董に興味があったリンさんが参加するようになって親交を深め、2019年に入籍した。
吉田さんは大阪出身、リンさんは長く日本語を学んでいたが、日本に住んだことはない。なぜ、京都へ? 「大阪でも京都寄りの守口市に住んでいたので、服を買いに行くのは京都。パリでは骨董や古着を趣味で集めていて、自分の店を開くなら、面白い個人店が集まる京都がいいと思っていました」(吉田さん) 「私は住んでいるところに合わせられます」(リンさん)
おしゃべりもチャーミングなリンさんは、パリの音楽院での練習の合間、「休憩時間の楽しみ」だったコーヒーの世界にのめりこみ、ノルウェー・オスロへの旅行で「豆ごとの特徴を楽しむコーヒー」を焙煎から学びたいと決意し、その後、学校へ。 折しも吉田さんは新宿伊勢丹でのポップアップをはじめヴィンテージ古着を扱う仕事に手応えを感じ始め、「機が熟した」とふたりで京都へ移り住んだのだった。
「京都はストーリーがあるところがいい」とリンさんが言えば、「古着のことも語ると長くなるんですが……サンローランなどハイブランドから、ノーブランドでも生地や縫製のいいものを選んでいます」と吉田さん。 「名前はなんでもよかったんですけど」と照れながら説明してくれた店名の「シテ」は、フランス語で「都」の意味である。 ●京都市下京区紺屋町375・4 TEL.なし 営業時間:8時30分~18時 火・水曜ほか不定休 詳しくはInstagram@cite_kyoto