50代経営者が猛省、牧場研修で気づかされた「指示出し」の問題点とは?
働き方や価値観が多様化する現在、リーダーのあり方が問い直されている。そんな中、アップルやナイキ、アウディといったグローバル企業で導入されているのが「牧場研修」だ。世界のビジネスエリートは、なぜ自然に学ぶのか? そこで培われるリーダーシップやビジネススキルとは? 本連載は、各国の牧場研修に参加し、スタンフォード大学で斯界の世界的権威に学んだ小日向素子氏の著作『ナチュラル・リーダーシップの教科書』(小日向素子著/あさ出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。 二段階のアンラーニング 第3回は、ナチュラルリーダーシップを身につける第一歩としての「アンラーニング」について解説する。 ■ アンラーニングは新たな「伸びしろ」との出会い 「ナチュラル・リーダーシップ」を身につける第一歩は、既存の価値観から自由になること、つまり、「アンラーニング」の習慣を身につけることです。 アンラーニングとは、これまで身につけてきた知識や思考、習慣、スキルなどから、必要なくなったものをいったん手放し、代わりに、新たに学び直しを行うことです。 まずは、無意識に抱いていた固定観念を自覚し、それらを手放すことから始めます。「若い人はやる気がない」「リーダーは自信にあふれていなければならない」といった決めつけや思い込みを、一時的に脇に置くのです。 すると、必然的にゼロベースで課題と向き合うことになり、それまで考えもしなかった新たな視点が生まれてきます。 その後は必要に応じて、脇に置いていた「過去の認識」も混ぜ込み、整理し直します。過去の学びを全面的に否定せず、場合によっては活用することも、アンラーニングでは大切です。 例えば、「今まで仕事がうまくいっていたのに、配置換えで環境が変わってしまい、居心地がよくない。これからどうすればいいのだろう」という悩みを抱えていたとします。中堅のビジネスパーソンにはありがちな悩みです。 このようなケースでは、次の思い込みを脇に置いてみます。 これまでの環境が最適だった。 これまでの自分は順調だった。 すると、「そもそも自分にとっての最適とは何だろう?」「自分は順調だと思っていたけれど、実はハッピーではなかったかも?」「これまでは自分の長所を活かせるシーンが少なかったのではないか?」などと、思わぬ問いが生まれます。 このような問いを深堀りしていくと、予測していなかった解決方法や選択肢、新たな「伸びしろ」が見つかるものです。突き詰めて考えた結果、「やはり、これまでの環境が最適だった」「これまでの自分は順調だった」と、再認識する可能性もあるでしょう。 その場合は、無理して否定する必要はありません。「過去の認識」が正しかったということですから、もう一度混ぜ直せばいいのです。 結論が同じであっても、深く考えた結果であれば、確信を持って行動できるようになります。「どうすれば新たな環境を最適にすることができるのか?」と考えるきっかけにもなるはずです。 いずれにしても、リーダーが覚悟と勇気を持ってアンラーニングに臨めば、その姿は周囲に大きなインパクトを与えます。 リーダーの学び直しそのものが、部下たちに有益な影響を与え、学びの連鎖を起こしてくれます。やがては社外の関係者にも影響し、社会へのよきインパクトにもなるでしょう。