ヒット曲初動化&ファン細分化を一気に加速させた「おニャン子クラブ」…そして「アイドル冬の時代」に
おニャン子クラブが登場する前年の’84年には菊池桃子や岡田有希子、荻野目洋子がデビュー、おニャン子デビューの’85年も斉藤由貴、中山美穂、本田美奈子、南野陽子、浅香唯といった“豪華な”面々が顔を揃えるわけだが、アイドル歌手という面では売り上げ的には苦戦を強いられる場面も少なくなく、’86年はおニャン子ソロデビュー組が大量に出現、前記したようにチャート上位を席巻することになる。 『夕やけニャンニャン』を送り出したフジテレビは、’89年にはタレント育成講座として「乙女塾」を始動、CoCoやribbonなどを輩出。テレビ朝日では’91年から『桜っ子クラブ』を放送開始、同名のグループには菅野美穂や中谷美紀が在籍したことでも知られるが、番組やグループが老若男女に親しまれるというほどの爆発力はそれぞれ生まれなかった。 それはもしかしたら、おニャン子の出現だけではなく、松田聖子の呪縛が続いていたのかもしれない。’80年に登場した究極のアイドルのかたち。聖子が作り上げたアイドル像を同じスタイルでは超えることができないために生まれたかもしれないおニャン子クラブという方法論。聖子を超えるオーラや才能がそうそう出るものではない。アイドル冬の時代の到来は、必然のものだったのかもしれない。 ◆CMやドラマ、雑誌グラビアから誕生した宮沢りえや牧瀬里穂、観月ありさ そして’80年代、そして昭和という時代の終わりに到来したバンドブーム。『ホコ天』や『イカ天』から登場したバンドたちがアイドルに代わる存在として若者の人気を集めることになった。 アイドル冬の時代には、バンド以外にもアイドルのような雰囲気もあわせもつ存在が次々と時代の顔となる。 その頭文字から「3M」と呼ばれた宮沢りえや牧瀬里穂、観月ありさ。内田有紀や広末涼子など、歌番組ではなくCMやドラマ、雑誌グラビアなどで発掘されるタレントや女優がアイドル的人気を獲得、CDをリリースしヒットする時代が訪れる(宮沢りえと観月ありさの人気の拡大は『とんねるずのみなさんのおかげです』の影響も大きい)。 そして、安室奈美恵(withスーパーモンキーズ)やSPEEDといった沖縄アクターズスクール勢の台頭も’90年代には到来する。男性アイドル界に目を向けると、’91年デビューのSMAPはデビュー当初は苦戦が続いたが、歌番組がない中でバラエティに進出したことで新たな道を切り開いていくことになる。 長い「冬」の終わりは、20世紀の終わりに突然やってくる。 『LOVEマシーン』の大ヒット、モーニング娘。のブレイクだ。 文:太田サトル ライター・編集・インタビュアー。学生時代よりライター活動を開始、現在はウェブや雑誌などで主にエンタメ系記事やインタビューなどを執筆。
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