吉高由里子、「光る君へ」柄本佑の地毛剃髪を見届ける 1年半にわたる共演で「共に戦ってきた感覚に」
まひろが「源氏物語」を書き始めてからは道長がプロデューサー的な役割を担い、ビジネスパートナーとしての関係が生まれた。しかし、第45回では「源氏物語」を書き終えたまひろが大宰府に旅立つ決意をし、道長に別れを告げた。このときのまひろの心境について、吉高は「もう苦しかったんじゃないかな」と振り返る。 「まひろは、自分が道長の役に立つことはもうできないとわかってしまっている上に、 手に入らない人のそばにずっといる苦しみもあって。ここにいる意味って何なんだろうとか、人生が虚しくなっている時期だったと思います。だからわたしがわたしでない場所に行って解放されたい気持ちもあっただろうし。道長から、自分を必要とされる言葉も聞きたかったのかもしれない。でも……もう苦しかったんじゃないかな。そばにいるのが。道長のためにできることはやり切ったっていう達成感もあったと思うんですけどね」
まひろは大宰府に旅立ち、今生の別れになると思いきや、まひろの従者・乙丸(矢部太郎)の懇願を受けたことから再び都に舞い戻り、道長と再会することになる。劇中では、まひろは旅先で大宰権帥・隆家(竜星涼)から道長が出家したことを聞かされ驚く展開だったが、吉高自身は道長の剃髪シーンに立ち会ったという。
「実はその日、自分の撮影は終わっていたんですけど、セットに残って道長の剃髪シーンを見届けていたので、道長と再会したときのシーンではサプライズ感はなかったんですよね(笑)。佑くんは全部地毛でやると2年間かけて髪の毛を伸ばしていて。それだけ気持ちが入っていたわけで、そういうふうに大事にしてきたものを切り落とす瞬間を、わたしも見ていたいと思い、残らせていただいたんです。佑くんは“言葉じゃ説明できない、わからない感情がこみ上げてきた”と言っていて。そういう瞬間を一緒に見られて、改めて共に戦ってきた感覚になりましたね」
まひろとして道長の剃髪姿を観たときの心境については「出家したと聞いていても、いざ入道姿になった道長を目の当たりにすると、びっくりはしますよね」と吉高。「『川辺の誓い』の回で病に倒れて弱っている道長の姿にショックを受けるのとはまた別で、衝撃はかなりあったと思います。あの時代、出家は死を意味するとも言いますから、ついに……という気持ちはあったと思います。でも一方でほっとしたのかなとも。もう苦しんでいる、弱っている道長の姿を見なくてもいいんだと。47回で再会したとき、まひろと道長はどれぐらい会っていないんだろうかと確認しました。わたしも1年半やっていて、こんなに気持ちがぐちゃぐちゃになることはないので、どういう気持ちだったのかと今一生懸命思い出しながら話しています」と言葉を紡いだ。 柄本について「(シーンについて)佑くんはどう思っているんだろうと自然に聞きたくなるような俳優さん」と信頼をにじませる吉高。まひろと道長の秘密の逢瀬の場所である廃邸のシーンなどでは「ぐったりするくらいぶつかり合い、話し合った」といい、「道長役が佑くんで本当に良かった」としみじみ。「ちょっと情けない三郎の部分も、(権力者として)恐ろしい道長になっている部分も、表情がころころ変わって。誰しも表の自分と内に秘めている自分の差っていうのがあるとは思うんですけど、そういう人間の生々しさを表現できる役者さんのお芝居を1年半も近くで見られたのは、すごく贅沢なことだなと感じています」