トランプ氏、政府効率化組織トップにマスク氏 歳出削減や規制緩和
トランプ次期米大統領は12日、連邦政府の歳出削減や規制緩和を推進する政府外の助言機関「政府効率化省(DOGE=ドージ)」を設立し、トップにいずれも実業家のイーロン・マスク氏とビベック・ラマスワミ氏を起用すると発表した。建国250年に当たる2026年7月を目標に政府機関の改革を進める。 【写真まとめ】「勝利宣言」したトランプ氏 トランプ氏は声明で「現代のマンハッタン計画(第二次大戦中の原子爆弾製造計画)」になり得ると期待を示した。政府効率化省の役割については「官僚主義を壊し、過剰な規制をなくし、無駄な支出を削減し、連邦政府のリストラを進める。ホワイトハウスなどと連携し、政府の外から助言や指針を与える」と説明した。 こうした方針は、共和党や保守派が伝統的に志向する「小さな政府」路線に沿っている。州や企業の自主性を尊重し、連邦政府による規制や監督権限を縮小する狙いがある。マスク、ラマスワミ両氏とも発信力が高く、宣伝効果も期待できる。 トランプ氏は26年7月を目標とすることで、26年11月に予定される中間選挙に向けた実績とする狙いがある。 マスク氏は10月のトランプ氏の選挙集会で、年間の歳出を「少なくとも2兆ドル(約309兆円)は削減できる」と述べた。米財務省によると、24会計年度(23年10月~24年9月)の歳出は約6兆7500億ドル(約1044兆円)。マスク氏の目標額が単年度で実現する可能性は低いが、「10年間で2兆ドル削減」を目指すとの見方もある。 一方、電気自動車大手「テスラ」や宇宙企業「スペースX」を率い、X(ツイッター)のオーナーでもあるマスク氏が関与することには、自身のビジネスに有利になるように政府の政策を誘導するとの懸念がある。 自動運転を巡る安全基準やロケットの打ち上げを巡る環境基準、ソーシャルメディアの運営指針などを巡って、ルールを緩和させる可能性がある。マスク氏は人工知能(AI)開発会社「x(エックス)AI」の事業にも力を入れており、AIを巡る規制の動きを抑えようとするとみられる。 「世界一の大富豪」であるマスク氏は、今年7月のトランプ氏銃撃事件後に支持を表明。1億1855万ドル(約184億円)以上を投じて選挙運動を支援してきた。トランプ氏も選挙戦中、マスク氏を連邦政府の効率化を進める役職に起用すると発表していた。 ラマスワミ氏も実業家出身で、今回の大統領選では共和党候補指名争いに参戦した。当初は知名度も低かったが、巧みな弁舌とトランプ氏に近い政策を訴えて支持を拡大。世論調査で独走したトランプ氏には及ばなかったが、一時は2位争いに加わった。【ワシントン秋山信一】