東京の暑さを逃れ栃木県那須町へ移住したフリーライターが実感した“地方移住を成功させる秘訣” 「まずは地元の飲食店でアルバイトを始めました」
満員電車や高額な住居費、ヒートアイランド現象など──とかく都会は生きにくい。そこで自然豊かな地方への移住を夢見る人も少なくない。特にコロナ禍以降、各地での受け皿が広がり、リモートワークが普及するなどして、条件は整ってきた。実際にやってみると、理想とのギャップに挫折する人も……。そこで、リアルケースを取材、波瀾万丈の移住体験記をお届けする。 【写真】夫の豊さんと愛犬のつぶ(秋田犬)。散歩ルートには美しい川が。東京ではありえない日常
【東京都から栃木県へ移住した青木まき子さん】 2020年、まき子さんが62才、夫の豊さんが55才のときに移住。それまでまき子さんはフリーライター、豊さんはジャズバーを経営。2人の子供たちは自立し都内在住。
東京の夏の暑さから逃れ避暑地へ移住
栃木県那須町に移住して4年目の青木まき子さん(65才)。移住のきっかけは、東京の夏の厳しい暑さに耐えられなくなったからだという。 「30年以上東京で暮らしてきましたが、近年の猛暑に体が悲鳴を上げるように。それで移住を考えるようになりました。ですから移住先の条件は、夏に涼しい場所であること、でした」 候補地はいくつかあったが、夫の豊さんの実家である宮城県や子供たちが暮らす東京からそう遠くなく、大きな地震が少ない地域であることから栃木県の那須にあたりをつけた。 「“那須”は、那須町と那須塩原市の2つの市町村に分かれています。移住先を決めてからは真っ先に、両方の役所の移住窓口に相談に行きました」 そこで、あまりの対応の違いに驚かされた。 「移住手続きに熱意があってとても親切な那須町に比べ、那須塩原市はそっけなくて……。移住を推進していないかのようでした。同じ那須地域なのに、実際に相談に行ってみないとわからないものですね。この対応の違いがきっかけで、那須町への移住を決めました」
東京では賃貸物件に住み、月約15万円の家賃を払い続けていたという。 「東京に比べて那須町は住宅価格が安く、中古だと1000万円を切るものも。たとえ移住に失敗しても、この値段なら惜しくないと考え、購入を決めました」 別荘地が点在する那須町には、夫婦2人で住むには手頃な中古物件がいくらでもあった。 「別荘地は移住者ばかりで、古くからこの地に住んでいる地元の人がほとんどいないのもよかったですね。私たちが住んでいる別荘地は約400世帯あり、そのうち約100世帯が移住による定住者。50~60代で移住し、いま70~80代になっている人たちがほとんどです」 住んでみてわかることも多かった。別荘は夏の利用を想定して設計されているため、断熱性能が低い。そのため、冬の寒さがかなりこたえた。断熱リフォーム、浄化槽の設置、水道の権利費など、想定外の費用がかかってしまったという。 「痛い出費でしたが、費用を抑える方法を地元の人に教えてもらい、通常よりも安く済ませられました」