「リバースモーゲージ」って何?/木暮太一のやさしいニュース解説
先日、みずほ銀行が「リバースモーゲージ」の取り扱いを始めると発表しました。日本でメガバンクが取り扱いをするのは、「初」です。
自宅を担保にお金を借りる
―――「リバースモーゲージって何?」 これは、簡単に言うと、自宅を担保にお金を借りる事です。通常は、住宅を購入するためにお金を借りますが、これはその逆で、住宅を担保にしてお金を借りることです。逆住宅ローンのようなイメージで、毎年お金を借りていきます。 借りたお金は、当事者が亡くなったあと、自宅を処分(売却)して返済しますので、自宅に住んだまま、お金を手にすることができます。 みずほ銀行の制度では、以下の条件に当てはまる人が対象になるようです。 ・土地評価額4000万円以上の持ち家を保有していること ・住宅ローンを完済していること ・55歳以上 リバースモーゲージの潜在需要が約23万人、5兆円規模に上るとみられています。 ―――「へぇ、 人気なんだね」 リバースモーゲージに注目が集まっている理由は2つ考えられます。 ひとつは、高齢者の老後生活資金が不足している(不足するだろうと感じている)ことです。アベノミクスで景気が良くなっていきそうという期待がある一方で、これからの生活に不安を感じる人も多いです。 また、国の借金がどんどん増えていく中、このまま年金が約束通りに支払われるか、疑問が残ります。 とはいえ、高齢者になってから新たに職を探して収入源を確保しようとしても、簡単にできることではありません。 だから、既に持っている自宅をお金に替えたいという需要が出てくるのです。
子供に家を残さない風潮
―――「なるほど、で、もうひとつの理由は?」 それは、「子供に家を残さなくてもいい」という風潮です。 国土交通省が今月7月2日に発表した2012年度の国土交通白書によると、40歳未満の若者の持ち家比率が1983年から08年の25年間で、大幅に低下したことが明らかになりました。 1983年には42.2%だったのが、2012年で28.4%に、約14%も低下しているのです。「賃金伸び悩みで、民間の賃貸住宅に住む傾向が強まった。」(日本経済新聞 2013年7月2日)と言う要因もありますが、お金があっても家を買わない人が増えている、つまり、自宅を所有したいと思っている人が減っていることも大きな要因です。 ―――「一生賃貸でいい、ということだね」 そうです。かつての日本には「子どもには家や土地を残したい」という考え方もありました。しかし、当の子どもが「家は要らない」と考えていたら、その必要もありませんね。 一度買った自宅を再びお金に替えるには、このような社会的背景もあると考えられます。 ―――「なるほどね。たしかに高齢者にはいい制度だね。」 でも気をつけなければいけないことがあります。それは、このリバースモーゲージに関する「リスク」です。通常の投資や金融取引に「リスク」があるのと同様、このリバースモーゲージの制度にもリスクがあります。 ―――「どんなリスクがあるの?」 大きく分けると、2つです。 ひとつは、「自宅を担保にしたのに、思ったよりお金が借りられない」というリスクです。 リバースモーゲージは、「自宅を担保にした借金」です。要するに「やがて住宅を売ってお金を作り、借金を返済する仕組み」なんです。 ということは、その担保がいくらになるか(評価額がいくらか)によって、借りられるお金が変わります。その土地の人気がなくなった、などで評価額が下がってしまえば、当然貸してもらえるお金が減りますね。 またその時の金利がいくらかによっても、融資を受けられる金額が変わります。 これは通常の借金と同じで、利子が高くなれば、当然借りられるお金も減ります。