ヒューマン 本木雅弘、8年ぶり主演映画は倉本聰氏脚本『海の沈黙』撮影への思い大いに語る 11・22公開
脚本家、倉本聰氏(89)の36年ぶりの新作映画「海の沈黙」(若松節朗監督、11月22日公開)に主演する俳優、本木雅弘(58)。映画は8年ぶり、倉本作品は初参加だ。同期デビューの歌手で女優、小泉今日子(58)とは32年ぶりの共演。さまざまな重圧と戦っていたとき、支えてくれたのは来年、真珠婚を迎える妻でエッセイスト、内田也哉子(48)の言葉だった。(ペン・栗原智恵子、カメラ・福島範和) 【フォトギャラリー】本木雅弘、8年ぶり主演映画で撮影への思い語る 足取り軽く本木が現れると、取材現場の空気は一気に華やいだ。 「倉本さんの最後の作品になるかもしれないという触れ込みでオファーを受けて。無事、(倉本さんに)見ていただけて良かった」と安堵の表情。 ドラマ「北の国から」や映画「駅 STATION」などで知られる倉本氏が構想に60年を掛けた渾身作。自らを「倉本作品の新参者」という本木は、不安を取り除こうと撮影前に電話を入れ、「定説になっている『語尾を一言一句間違わずにせりふを読みなさい』ということでよろしいのでしょうか?」と直球質問。「それは噂が一人歩きしていてね。解釈がズレていなければ広げていい」と言われ、「一つ安心して」現場に飛び込んだ。 孤高の画家、津山竜次を演じた今作は、「美とは何か」を投げかける大人のラブストーリー。「主人公を物語るのではなく、美とは何かという投げかけが物語の主役。美しいものに対しての価値、基準は他者が決めるものではないという倉本さんの命題は生きること全てに通じると思います」。若松監督は不器用な人たちを描く倉本イズムに本木と小泉のラブストーリーを添え、化学反応を生み出した。 元恋人・安奈役の小泉は、1992年のドラマ「あなただけ見えない」の恋人役以来の共演。同じ82年に歌手デビューし、「男女を超えた情、リスペクトをもって見ています」と敬意を表す。 最近は会っていなかったが、役同様の空白の時間を「千載一遇」と表現。再会シーンを撮るまでは「同じホテルで部屋番号も知っていたけど連絡せず」と役作りを徹底した。満を持して臨んだ撮影については「若い時に見つめ合った小泉さんの中にあった母性本能がより熟成されて菩薩になっていました。どこか絶対、自分の信念を曲げない強さっていう隠されている奥深さもあって、あらゆる意味でかき立てられる人相だと思った」と振り返った。 この気持ちは安奈を見て創作意欲をかき立てられた竜次に重なった。「役の解釈に入ったり、実際の自分と小泉さんの歴史を振り返ったり、不思議な時間でした」としみじみ。撮影を終えると小泉の運転するレンタカーで関係者と郊外のレストランへ。気心の知れた友とひとときの安らぐ時間を過ごした。