日本が常任理事国入りするためには何が必要? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
独、印、ブラジルと2004年から活動
日本は第二次世界大戦の敗戦国同士で国連への財政に貢献している割には冷遇されているとの共通認識を持つドイツ(分担金3位)と連携して常任理事国入りをうかがってきました。支持拡大には日独だけではなく91年に安保理議席の拡大および正しい配分を求めたインドとブラジルと協力関係を結び「G4」として2004年から活動を始めました。ちなみに「G」は「グループ」の頭文字。 一方でG4の常任理事国入りに反発する国は「コンセンサス・グループ」と称して反対運動を繰り広げました。日本には韓国が、ドイツにはイタリアが、インドにはパキスタンが、ブラジルにはアルゼンチンがグループの中心。まあ隣国への警戒心は日韓固有でないとわかります。 常任理事国の動きも微妙でした。中国は日本の常任理事国入りに本格的に反対。日本の頼みの綱であるアメリカもバーンズ米国務次官が05年6月「常任理事国は日本を含めた2ヶ国程度」との意思を明らかにし、G4案だと米議会は批准しないとの推測を伝えてきます。
「拒否権」めぐり思惑にズレ
G4の当初の要望は拒否権を新常任理事国にも与えよとの内容だったのも難度を高めました。これはG4のうち隣国パキスタンとの深刻な紛争を抱えるインドが強硬に主張して他の3国も折れた結果とされます。この「拒否権付き常任理事国」は「日本を含めた2か国程度」を認めたアメリカさえ不同意でした。 あまりに反発が強いため06年の再提出では憲章改正の15年後に見直しの議論をして、そこで決まるまで新常任理事国は拒否権を行使しないというところまで譲ります。 日本を除く3か国はG4案で突っ走る予定でした。だが日本はいくつかの点で踏み切れません。まずはアフリカ枠が決まらなかった点。当初はG4案に沿ってはアフリカ連合(AU)を中心に2か国を選んでもらうと同時にアフリカ各国の支持を総会で加えて全加盟国の3分の2以上の賛成をかき集め、憲章改正の第一歩をクリアし数の圧力で常任理事国も説き伏せるとの構図でした。しかし7月に開かれたAU首脳会議がG4案とは別の独自案の提出で合意してしまってもくろみは崩壊。 二つ目は中国の反発です。常任理事国すべてが支持しないG4案ならば中国が拒否しても国際的孤立を心配せずにすみました。 最後はやはりアメリカの存在。日本の常任理事国入りは支持してくれているというのが痛しかゆしでG4から抜け出して支持を取り付け、拒否権付きは反対されるので「拒否権なしの常任理事国」を目指せなくはなく、安保理の他の常任理事国4か国にはアメリカから説得してもらう。中国の賛成は考えにくいがアメリカたっての願いとなれば欠席または棄権でまとまる可能性もある……と。 でもそうしたらG4の他の3国からは大ブーイングを浴びるのは明らか。といってG4つぶしを狙うコンセンサスグループに歓迎されるかというと、そうでもありません。「裏切り者」というレッテルは敵味方関係なく軽蔑の対象になるからです。