【衆院選】中高年こそ「政治離れ」、深刻さは若者以上!背景に「いい大人」の若者化や地域社会の崩壊
■ 若づくりに精を出す中高年が増えすぎた 松本:90年代初頭までの中選挙区制時代と比較すると、今の中高年は年齢の割に若々しくなっていると思いませんか。若々しくなっているというのは、行動パターンや趣味嗜好、情報収集の傾向が、若者に近づいているという意味です。 昭和や平成初期までの中高年は新聞を読むのが当たり前でしたし、大人としての威厳を感じさせる頑固者が多かったように思います。 対して今の中高年は若い人と同じようにLINEでコミュニケーションをとり、アンチエイジングにも熱心です。新聞をはじめ、活字に触れる人も減った印象で、若者と似たようなライフスタイルを送っています。私個人の意見としては、やはりもっと年齢に応じて、地域社会や国家に対して自らの権利を行使し、責任を果たすべく、投票してほしいと思っています。年相応の生き方を示してほしいということですね。 以下の図表を見てください。 さいたま市民の政治意識調査によると、「投票したいと思う候補者がいなかったから」という理由で投票しなかった50~60代は、20代と遜色ないくらいの数字になっています。 70代以上は病気などの理由によって投票したくても投票できない、という言い訳が立つにしても、50~60代が「投票したい人がいない」という若者のような理由で投票しないのは、責任転嫁と思われても仕方がないと思います。 ──96年から採用された小選挙比例代表並立制で、国政選挙では全年代で投票率が下がる結果になってしまいました。
■ 地域社会の「無縁化」も投票率を押し下げている 松本:中高年のライフスタイルの変化という主観的な議論はわきに置くとしても、地域社会の変容と選挙制度の変化が、中高年の政治離れを加速させたことも指摘しなければなりません。 かつて、地方において選挙は「お祭り」のようなもので、各地域で支持を受ける個人の政治家を応援することが当たり前でした。あまり褒められたことではありませんが、半ば強制的に選挙に行かされる人もいたでしょう。それが2000年以降、人口減やインターネットの発達などの理由により、地域社会のつながりが希薄になっていきます。 特に地方の選挙で顕著ですが、田舎ほど投票率が毎回下がっています。 市議選において、さいたま市の中でも都会に近い浦和区や大宮区は投票率の減少が緩やかなのに対して、周辺部の岩槻区では極端に落ち込んでいます。地域社会の「無縁化」と政治離れがどれほど密接な関係にあるか、わかるのではないでしょうか。 地域社会の無縁化と歩調を合わせるように、96年に小選挙区比例代表並立制が採用されます。 小選挙区制はリクルート事件を契機にした「政治とカネ」の問題の解決をねらった制度ですが、1つの選挙区から政党を選ぶ仕組みになったため、政党の看板やリーダーの人気に依存して当選する人が多くなってしまった。 中選挙区時代は1つの選挙区で同じ政党から複数の候補者が出ることが当たり前で、「誰を選ぶか」という政治家個人に重きが置かれていました。しかし、今や政治家個人の応援というより、「どの政党を選ぶか」という側面の方が強くなっています。 政治家個人を応援するモチベーションが保てなくなると、投票率は下がっていきます。事実、衆院選において96年以降一時的に投票率が上がったのは2009年に民主党が政権を握ったときくらいのものです。当時は都市部の無党派層が、「政権交代」を期待し投票していました。 元々、選挙に行く習慣を下支えしていた地方の「しがらみ」が希薄化した上に、選挙制度も民意が反映されているのかどうか分からないものになってしまった。それが、中高年に限らず、投票率が下がっている理由でもあります。