「睡眠」と「旅」の組み合わせに世界が注目! 2025年トレンドは「スリープツーリズム」
コロナ禍を経て、年々重要視されつつあるウェルネス。価値観の変化に伴い、ウェルネスな体験を得るために旅をするウェルネスツーリズムが世界的に注目されています。なかでも、日本でじわじわ注目を集めているのが良質な眠りを求めて旅をする「スリープツーリズム」。その最新事情を、睡眠業界を盛り上げるために生まれた企業や個人をつなぐコミュニティ「ZAKONE」の代表・佐々木翠さんに教えてもらいました! 【スリープツーリズム5選】カプセルホテルからリゾートホテルまで!自分に合ったプランを見つけて (写真)
■ウェルネスのトレンドは旅? 世界が注目するスリープツーリズムとは ──最近、スリープツーリズムという言葉を耳にすることが増えてきました。スリープツーリズムとは具体的にどのようなものなのでしょうか? 佐々木翠さん(以下、佐々木):スリープツーリズムとは、良質な睡眠をとることを目的とした旅のことで、世界的にトレンドとなっているウェルネスツーリズムのひとつです。 ──ウェルネスツーリズムについて、詳しく教えてもらえますか? 佐々木:はい。ウェルネスツーリズムとは、心身の健康の維持改善を目的とした旅行で、スパやマッサージ、瞑想、スポーツ、食事など、健康につながるさまざまなエッセンスを含んだ旅行のことです。 特にアメリカでは、非常に高価格なウェルネスツーリズム特化型施設が登場していて、海外セレブが宿泊するなど話題を呼んでいます。 コロナ禍からの回復の影響はあるものの、市場規模は2020年から2025年までに年平均成長率20.9%という驚異的なスピードでの成長が見込まれていて(※1)、成長を続けるウェルネス産業の中でも、ウェルネスツーリズムへの注目度はとても高いんです! ※1:EIS insight「急拡大するウェルネスツーリズムは日本再発見の絶好機」記事内、「Global Wellness Institute」のデータより ──ウェルネスツーリズムの中で、スリープツーリズムの存在感も高まってきているのでしょうか? 佐々木:スリープツーリズムは、ウェルネスツーリズムの中でも、ごく最近でてきたもので、2024年4月に日経新聞が『「スリープツーリズム」上陸 睡眠に商機、世界市場96兆円』という記事をだしたのを皮切りに、日本でも快眠サポートのステイプランなどが増えてきている印象です。 ただ、アメニティ導入や計測サービスのみで、複合的に快眠をサポートしているプランはまだ少ないのが日本国内の現状です。 本来、快眠のためにはサーカディアンリズム(約24時間周期でリズム信号を発振し、睡眠・覚醒、血圧、体温、ホルモン分泌などの調節を担う機構)を意識した日中の活動も重要。 そのため、部分的にアイテムを活用するだけでは不十分で、人との交流や、新しい体験、自然とのふれあいなどを含め、五感に働きかける体験と空間をトータル的に設計することが本当の意味でのスリープツーリズムと言えます。 ■スリープツーリズムが注目される背景にある、日本人の睡眠問題 ──これから、包括的に体験をプロデュースするようなスリープツーリズムが増えていくことに期待したいですね。まだまだ本格的に実施している宿は多くないものの、スリープツーリズムが注目される背景には何があるのでしょうか? 佐々木:まず、世界的にみて日本人の睡眠時間は短い傾向にあります。2021年に発表された経済協力開発機構(OECD)の平均睡眠時間の各国比較によると、先進国を中心とした世界33カ国のうち日本は最も短く、1日あたり7時間22分(※2)でした。 ※2:経済協力開発機構(OECD)「Gender data portal 2021」より 加えて、コロナ禍を経て、日本人の5人に1人が睡眠の質の悪化を感じているという調査結果(※3)も出ていて、実際、「Yakult(ヤクルト)1000」や「Pokémon Sleep」など睡眠に関するアイテムがコロナ禍に、話題になりましたよね。 ※3:2020年11月30日NHKニュース「5人に1人が「睡眠の質が悪化」 新型コロナによる生活変化影響」内、ウーマンウェルネス研究会による「新型コロナウイルス拡大以降の睡眠の質の変化(n=882)」より そういった、睡眠に悩む人の増加とともに、コロナ禍の影響による価値観の変化もスリープツーリズムへの注目を下支えしていると思います。 コロナ禍前は有名な観光エリアを訪れることを目的とし、安さや利便性が宿選びでは重要視される傾向がありました。しかし、コロナ禍以降はウェルネスなど自分の時間や嗜好を大切にする人や、その土地ならではの独自の体験に価値を見出す人が増えたと感じています。 スリープツーリズムは、そういった日本人ならではの睡眠事情と、コロナ禍を経て変化した旅に対する価値観が影響し、最近、じわじわ人気が高まってきているのではないでしょうか。 Sleep Network Hub「ZAKONE」代表 佐々木翠 NTT東日本デジタルデザイン部地域ソリューション開発部門担当課長。日本の睡眠業界を盛り上げるために生まれた、企業や個人をつなぐコミュニティ「ZAKONE」の代表を務め、睡眠健康指導士上級の資格を保有。スリープツーリズムのプロデュースのほか、企業向けに睡眠セミナーなどを実施する。 取材・文/長谷日向子