王者Netflixの“隙”、忍び寄る2番手U-NEXT オリジナル無しの逆張り戦略
有料会員数は大幅に伸長
この結果、有料会員数は大幅に伸長。23年2月末は292.5万人だったが、同年6月のParavi統合を経て、24年5月には433.9万人と急増した。1年数カ月で140万人超増えた計算になり、佐野氏はU-NEXTの認知度アップも大きく寄与したと見ている。 ここで興味深いのは、近年、「オワコン説」が強まるテレビというオールドメディアの底力だ。佐野氏は民放公式テレビ配信サービス「TVer(ティーバー)」の強い送客力について指摘。無料のTVerは月4000万UB(ユニークブラウザー)を誇り、ここからの流入が如実に増えているという。 「Tverのドラマ配信はその週の放送分や1~3話限定というパターンが多く、過去放送分をU-NEXTなどの動画配信サービスで楽しむケースが散見される。TVerが動画視聴の入り口として機能してくれている」(佐野氏) ●オリジナルドラマは? では、競合サービスのようにドラマや映画のオリジナル作品制作には、今後も手を出さないのか。この疑問に対して、佐野氏は「作りたいという思いはあるものの、資金力がまだ弱い。その前に、ドラマや映画に比べるとコストが少なく済み、オリジナリティーを出せる自社のIP(知的財産)を増やしていきたい」と説明する。 実はU-NEXTは20年にオリジナル小説、22年にオリジナルコミックの制作体制を立ち上げた。24年9月には小説『団地のふたり』がNHK BSでドラマ化されている。 「他社のように映画やドラマに継続的な投資を続ける体制はまだ整っていない。出版文化が根付いた日本だからこそ、ゼロからイチを創り上げるやり方でU-NEXTの存在感を示していきたい」(佐野氏)
プレミアリーグと契約
「ライブコンテンツの強化」もU-NEXT人気を強固なものにしている。近年、スポーツや音楽関連のライブコンテンツを精力的に増やしており、23年のライブ配信はスポーツが2888本、音楽が160本という実績をたたき出した。 さらに24年7月にはプロサッカーリーグ「プレミアリーグ」(イングランド1部)と7年間のパートナーシップ基本契約を締結。同年8月から「U-NEXTサッカーパック」をスタートさせている。 U-NEXT代表取締役社長を務める堤天心氏は、「利用者が寄せる熱量が高いライブコンテンツの中でも特にサッカーは有望株。試合が定期的に開かれる点も含めて、サブスクリプションの動画配信サービスとの親和性があるコンテンツだ」と狙いを説明する。 U-NEXTでスポーツを観戦する利用者は継続率がとても高く、今回のプレミアリーグとの契約でさらなる向上を狙う。なお、こうしたライブコンテンツは施設からの需要も高く、「インバウンド需要に沸くホテルなどからの要望が多い」(堤氏)という。