ラグビーの日本選手権、来季から大学枠撤廃決定の賛否
まず「学生対社会人」というカードを失うことは、判官びいきのスポーツファンからの支持を失うことと同義である。ワールドカップ・イングランド大会直後のブームは、すでに鎮火している。チケット収入が見込めるカードをわざわざ手離すデメリットを日本協会はどう捉えているのか。 国内の日程を1月中旬までに終わらせるのを条件としながら、日本選手権に大学生チームを参加させる方法は、ゼロではない。例えば11月23日の「早慶戦(早大対慶大)」、12月第1週の「早明戦(早大対明大)」という不変の日程にメスを入れれば、3者および帝京大の加盟する関東大学ラグビー対抗戦Aの日程が短縮。大学選手権の終了も早められ、日本選手権を学生も含めた5チーム以上による大会に昇華できるのだ。 「早慶戦」と「早明戦」の日程変更に反対するOBは数多くいるが、現明大の首脳陣の1人は「夏の熱い時期に早明戦をやったっていい。もう時代は変わっている」と断言している。 トップリーグにも11月の中断期間の一部でリーグ戦を進行させるなど、いま以上の日程短縮化の道がある。11月は国代表がテストマッチをするタイミングのため、リーグ戦をおこなっても日本代表選手の負担にはならない。リーグ戦の日程がショートになることで、今度の提案上は日本選手権と兼ねる形となっていたトップリーグプレーオフの催行の可能性も浮上する。 そもそも「2019年に向けたトップ選手の休息の確保」という大義については、より当事者の声を精査する必要があろう。 例えば、昨秋の日本代表活動で辞退者が増えた理由は、ただ単に「皆、疲れていた」からだけではない。本当は時を経ての代表復帰を目指しているイングランド組を、一部スタッフが「もう彼は代表を引退した」と発するなど、体調管理以前のミスコミュニケーションの存在は明らか。 「学生対社会人」をなくすよりほかに、着手すべき課題はある。 今度の「学生対社会人」の撤廃の背景には、両者間の実力格差があったとされる。しかし実際の「学生対社会人」は、挑む側の資質次第で失敗体験からも成長のきっかけを掴める場だ。それは、サンウルブズの選手がスーパーラグビーのチームと対戦する試合と似たシチュエーションなのだが、学生枠の撤廃は、その成長への絶好のチャンスを積むことにつながる。 大学選手権8連覇中の岩出雅之監督は、今度の件を伝え聞くや2016年12月8日付の『スポーツ報知』に「日本選手権は学生の成長を助ける大事な存在。大きな柱をひとつ失う気がする」と発言している。 かねてトップリーグ勢撃破を具体的目標に掲げてきただけに、チームのモチベーションのありかを再設定せねばならなくなる。