十人十色の武器を育てる~通信制高校、教育革命の全貌
この日、須藤さんが向かったのは新薬の開発にあたるスタートアップ企業「MOLCURE」。プログラミングの腕を買われ、高校生ながらインターンとして働いているのだ。 研究しているのはゴーグル型のデバイス。つけると、目の前に黄色い矢印が現れ、その指示通りに手を動かせば素人でも薬が作れるようになると言う。 N高で学んでいる英会話をフル活用。フランスから来た同社のシステムエンジニア、ウレリク・カミーユさんも須藤さんの活躍には目を見張る。 「高校生のインターンは珍しいけど、彼は全く問題ない。高校生とは思えないほどチームに溶け込んでくれている。彼から教わることも多いよ」 N高には大きく分けて2つの学び方がある。ひとつは自宅などでネットを使い受講するネットコース。学費は年間6万3000円~。もうひとつは週に何日か決めて登校する通学コース。全国43カ所に拠点があり、都合のいい場所に登校できる。ちなみに制服はあるが服装は自由。学費は年間56万3000円~。 須藤さんは通学コースに所属。だらしない生活にならないようにと週3日、横浜キャンパスに通っている。到着早々、始めたのは趣味のゲーム作りだ。隣の生徒は受験勉強中。ダンスをやっている生徒はそのためのTODOリストを更新中だ。みんな好きなことをやっているが、それでも通う意味は大きいと言う。 「みんなバラバラだけど刺激を与え合う。自分から『これをやりたい』と活動しているからすごく真剣。『何をやっているの?』と聞くと、面白いし、刺激になります」(須藤さん)
好きなことを好きなだけ~個性を伸ばす異色の教育
ある日、生徒の前に現れたのは菅義偉前総理だ。これは部活動のひとつ政治部で、歴代総理をはじめとする現職議員と生徒たちが直接、意見交換している。 一方、投資部の特別顧問は「モノ言う株主」として知られる投資家、村上世彰氏だ。部員の活動は想像を超えている。ネットコースの2年生、秋藤陽さんの一日は、朝の9時、取引開始に合わせた株価のチェックで始まる。投資部の部員は実際に株を買って株式投資を学んでいるのだ。村上氏の財団が部員一人につき20万円を支給。一年活動して、儲けが出た分は自分のものに。失敗しても返さなくていい。 「20万円が銀行に振り込まれた重みを感じられるので、それだけでちゃんと勉強しようと思えます」(秋藤さん)