「平安文学、いとをかし―国宝『源氏物語関屋澪標図屏風』と王朝美のあゆみ」(静嘉堂文庫美術館)開幕レポート
修理後初公開の絵巻 平安時代から現代まで、人々を魅了し続ける平安文学の世界。そんな世界に連れて行ってくれる展覧会「平安文学、いとをかし―国宝『源氏物語関屋澪標図屏風』と王朝美のあゆみ」が、東京・丸の内の 静嘉堂@丸の内(静嘉堂文庫美術館)で開幕した。担当学芸員は藤田紗樹。 本展は、「平安文学の世界にようこそ!」「絵巻物で読む物語」「時代を超える『源氏物語』」「平安古筆と料紙装飾の美」の4章構成。 和歌を美しく記すために平仮名が発展し、これに伴い平安時代中期から後期(10世紀~11世紀)にかけて仮名文学の最盛期を迎えた。1章では、「古今和歌集」(南北朝~室町時代 14~15世紀)や「蜻蛉日記」(1697)、「更科日記」(1704)など、静嘉堂文庫所蔵の古典籍から、王朝文学が花開いた平安時代中期以降の作品が紹介される。 続く2章は、平安時代の出来事や物語を題材とした絵巻物が主役。なかでも注目したいのが、修理後初公開となる重要文化財「住吉物語絵巻」(鎌倉時代 14世紀)だ。継母に虐げられる姫君と、その姫君を一途に思う少将の恋を描いたこの住吉物語。その絵画は静嘉堂本と東京国立博物館本の二種類があり、本作は後者に次いで古いもの。詞書は住吉物語のまとまった分量の本文として現存最古だという。また、藤原氏の栄華を描いた『栄花物語』の一場面、「駒競行幸絵巻」も同じく修理後初公開となった。
文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)