決算不振、日本株が一段と冷え込むリスク-予想未達は過去3年で最多
自動車セクター以外でも、中国事業低迷の影響を受ける事例は少なくない。また、一部の企業では人件費や原材料費の上昇が利益を圧迫しているケースも出ており、今後アナリストの業績予想は下方修正含みだ。日本株の予想EPSは既に8月以降の円安修正などもあり、下落傾向。2020年以降に見られた改善トレンドが明らかに変調を来している。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員は、今後の一段の業績悪化が予想されているわけではないが、トランプ次期米大統領の不確実性を踏まえると、日本企業は当面慎重な業績計画を立てることになると予想。「EPSの大幅な上昇や継続的な上昇は当面期待しにくい」との見方を示す。
自社株買いは最高水準
日本株にとって好材料がないわけでもない。企業の自社株買いは引き続き過去最高水準だ。ブルームバーグがまとめたデータによると、今年度の自社株買い設定枠は12日までに14兆7000億円と昨年同時期の倍以上のペースとなっている。大和アセットマネジメントの富樫賢介チーフストラテジストは「自社株買いは過去にないスケールとなっており、需給面での影響はじわじわ効いてくるだろう」と言う。
また、JPモルガン証券の西原里江チーフ日本株ストラテジストは、企業業績は見かけほど悪くないとの認識だ。一時的費用や為替の影響で経常利益や純利益は減少したものの、本業のもうけを示す営業利益は底堅いと見ている。
実際、業績が低調な割に足元の日本株は堅調に推移。「トランプラリー」の影響で為替市場では円安が進んでいるほか、米経済との関係性の深さやトランプ次期政権が導入を検討する関税の主な矛先は中国に向いており、相対的に被害は少ないとの読みがある。米大統領選後のTOPIXの上昇率は米S&P500種株価指数には及ばないが、欧州やアジア主要市場を上回っている。
とはいえ、今後米国のように企業業績の改善が伴わなければ、足元をすくわれるリスクはありそうだ。S&P500銘柄の今期業績は、全体の75%が予想を上回っている。T&Dアセットマネジメントの酒井祐輔シニア・トレーダーは、今回の決算シーズンでは同業種内の格差が広がっているのが特徴だと指摘。そうした状況で、「相場全体が上がるのは難しい」と述べた。
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Hideyuki Sano