「友だちと同じ学校に通いたい」 知的障害ある14歳の願い 公立高校入試、空きがあるのに…”定員内不合格” 「将来考えると通わせたい、でも…」母が抱く複雑な思い
専門家「意欲重視の仕組みでの判断を考える必要があるのでは」
元北海道大教授の中川明弁護士(東京)は、障害のある中学生が特別支援学校ではなく公立高校を志望する傾向が強まっている一方、それに対応するには現状の入試制度では難しいと指摘する。試験の点数では適性を十分に見極められない可能性があるとし、「高校で学びたいという意欲を重視する仕組みで判断することも考える必要があるのではないか」としている。
障害ある中学生、公立志望の傾向強まる
定員内不合格は特に、障害がある受験生や家族らにとって大きな関心事だ。多様な子どもたちが一緒に学ぶ「インクルーシブ教育」の認知が広まり、障害がある中学生が特別支援学校でなく公立高校を志望する傾向は強まっている。当事者は入試制度にもどかしさを募らせている。
「友だちが行く高校に通いたい」
長野県の東信地方に住む中学3年の男子生徒(14)は軽度の知的障害があり、読み書きが苦手だ。通っている公立中学校では数学と英語の授業を特別支援学級で受け、定期テストは学校側が配慮して平易にした問題を解いてきた。地元の県立高校普通科に進学することを望み、「友達が行く高校に通いたい」と話す。
将来を考えて高校に行かせたい、でも現実は…母のもどかしい思い
しかし母親(59)には複雑な思いがある。「高卒資格の得られない支援学校ではなく、将来のことを考えると高校に行かせてやりたい。けれど現実的には点数が足りずに不合格になる可能性がある」。県内の高校入試は本年度から自己推薦型の前期選抜、一般入試の後期選抜ともに学力検査があり、得点力が大きな壁になっている。
定員割れが続く志望校…門戸広げてもいいのでは
息子が志望する高校は昨年度の受験者が10年前の3分の1以下となり、定員割れが続いている。中学卒業生のほとんどが高校に進学する現在。それなら、学力検査の結果のみにせず、強く入学を希望する人への門戸を広げてもいいのではないか―。そんな思いが自然と膨らむ。
試験では「合理的配慮」も
県教育委員会は、障害のある受験生が不利にならないよう「合理的配慮」を必要に応じて講じると説明する。事前に本人や保護者と協議し、漢字に振り仮名を付けた問題への変更や、別室での受験、試験時間の延長などといった対応をする。
「息子の頑張り実らせたい」
母親は、息子の特性に応じた配慮を受けられるよう、医師に診断書を依頼したり、知能検査を受けたりと準備してきた。知的障害のある生徒が高校を卒業した北海道旭川市の事例を知り、近くに住む教員らに助言も求めた。受験勉強に励んでいる息子の頑張りを実らせてあげたい―。そんな思いで「とにかくできることをしたい」と前を向いた。