哲夫(笑い飯) 苦しいことも楽しいことも「諸行無常」のもとに「この状態はずっとは続かへん」と考えて。だからこそ思いきり「今」を満喫して楽しむ
漫才師でありながら、仏教マニアとしても知られるお笑いコンビ・笑い飯の哲夫さん。それにとどまらず、現在は《六足のわらじ》を履いて生活しているといいます。一風変わった働き方をのぞいてみると、独自のお金の使い方も見えてきて――(構成=野田敦子 撮影=田原由紀子) 【写真】奈良の実家で農業にいそしむ哲夫さん * * * * * * * ◆借金に学んだお金の使い方 こんなこと言うと、お金に執着しない無欲で立派な人みたいですね。いやいや、まったくそんなことはありません! 僕、お金大好きですもん。 節約もしますよ。ラーメン屋に行ったら、僕は一番安いラーメンしか頼みません。チャーシューや卵のトッピングなんて、もってのほか。「そんなんしたら、スープの味変わるやん!」と、冷ややかな目で周りの人を見ています(笑)。 ガソリンや鉄道の切符も最安値のチケットショップを探してますね。自分が買った店より高い店を見かけると、心の中でガッツポーズ。毎日ゲーム感覚です。 でも、そんなふうに節約するくせに、欲しい車には大枚はたいたり、後輩100人連れて花見をしたり、好きなことにはパーッと使う。もしかしたら、僕の時間の使い方とお金の使い方は似ているかもしれません。どちらも無駄は省いて、好きなことにたっぷり使いたいんです。 時間で言うと、駅のホームに着いた瞬間に電車のドアが開き、一歩も止まることなくスッと乗れる感じ。ホームで待っている時間があれば別の場所でほかのことができるし、スキマ時間を埋めた分、夜にお酒を飲みながらダラダラできる(笑)。 お金も同じで、無為に使わず、好きなことにドンと使いたい。そんな生き方に本人はいたって満足なんですが、母親からは「あんたはほんまいつも、せかせかしてるな。ちょっとゆっくりしたらどうや」とよう言われます。(笑)
◆大学生の時、詐欺に引っかかって お金の使い方を意識するようになったのは、大学時代のある出来事がきっかけです。パチンコで作った負けを取り戻そうとして詐欺に引っかかり、150万円もの借金を背負ったんです。 詐欺だと薄々気づいていたのに、一縷の望みを託して傷を深くしてしまった。「俺はギャンブルをやったらあかん人間や」と気づき、以来一度もしていません。 当時、親にも言えず困り果てていたとき、快くお金を貸してくれた友人がいて本当に救われました。そういう経験もあって、後輩芸人が消費者金融に借金していたら、「利息はいらんから、これで返してこい」と、お金を渡すようにしています。借金を抱えると冷静に物事を考えられなくなるし、いいネタも書けませんから。 たまに返済してもらえないときもありますが、僕の貸したお金がどこかの企業に支払われ、そこから給料をもらってごはんを食べた人がいるかもしれない――そう考えて水に流すようにしています。もちろん腹は立ちますけどね。(笑) 僕自身は二度と借金をしたくないので、時間の許す限りお金は稼いでおきたい。とはいえ、必要以上に貯めないほうが世の中のためになる、というのが僕の持論。だから「ここまでは貯める」と決めて、クリアしたらある程度使うようにしています。
【関連記事】
- 哲夫(笑い飯) 仏教マニア、塾経営者、農家、花火解説者…お笑い以外の仕事を考えたことがない自分が<六足のわらじ>を履くようになったワケ
- アンガールズ・田中卓志「タレントは騒いで楽に稼げると思っていたかつての自分。その裏ですごく努力していたビビる大木さんの姿に今も励まされて」
- ナイツ・塙宣之 身勝手極まりない舅・静夫さんと7年一緒に暮らし、うまくいっている秘訣。「最初の2年はイライラすることも。人格者・姑のやす子さんと話せば共感できる」【2023年BEST】
- アンガールズ・田中卓志「看護師の母親が作ってくれた兄弟3人分のお弁当。冷凍食品含めてすべてが愛情だった」
- 吉本新喜劇の看板女優・未知やすえ「完治しない間質性肺炎と診断され、意識が変わった。時代も変わり、キレる相手は夫の内場勝則に」