ミドル・シニア世代が、思わず「部下の行動にハラハラしてしまう」理由【人材開発コンサルタントが解説】
取引先や商談の場で、部下の言動にハラハラしてしまった……そんな経験のあるミドル・シニア世代も多いでしょう。いったいなぜそのように感じてしまうのか、『55歳からのリアルな働き方』(かんき出版)著者で人材開発コンサルタントの田原祐子氏が具体例を交えて解説します。
ミドル・シニアに眠る「経験知」という宝物
あなたの中には、まだ気づいていない、素晴らしい「極上の宝物(経験知)」が眠っています。それは、これからのあなたの人生において、生涯続く財産でもあり、決して消えることはありません。 それどころか、若手社員が今から追いつこうとして、死ぬほど頑張って働いても、決して手が届かない「あなた自身にしかない特別な宝物」です。 あなたには、長年コツコツと働いて蓄積してきた、経験知があります。 経験知とは、「単なる知識」のことではありません。経験知とは、経験や学びを通じて獲得される知識です。当然ながら、単なる知識とは、その内容も市場価値も大きく異なります。この経験知こそが、仕事において大きな価値を生み出します。 経験知は「(1)専門分野=知識・領域」「(2)実践スキル=業務経験」「(3)コンピテンシー=行動特性・人間性」の3つで構成されています(以下、(1)~(3)を総称する際には、「知識・スキル・コンピテンシー」と略します)。 部下にハラハラする背景にある、自身の「過去の失敗」 ■ケース1.あなたのお客様が法人の場合 たとえば、あなたのお客様が法人である場合なら、こんな具合です。あなたが、部下と一緒にお客様を訪問する際、彼らが話す内容や言葉遣い、態度にハラハラしたことはありませんか。 部下が、気難しく物事に細かいお客様に対して、詳細な説明を省略し、「とにかく自分は、誠意を込めて仕事をするから、任せてもらえれば大丈夫です!」と、少々フレンドリーに話しかけている。 「このタイプのお客様に、あんな態度で接すると、あとから大変なことになるのに……」と心配になっているかもしれませんし、そもそも部下のような接し方はしないでしょう。 おそらく、あなたなら、長年数多くのお客様に接してきた経験によって積み重ねてきた経験知から、気難しく物事に細かいお客様に対しては、「相手が気になりそうなポイントを、あらかじめ想定して、細やか、かつ丁寧に、詳細にわたり説明」することでしょう。 もしかすると、昔、今目の前で部下がやってしまっているような失敗をしたことがあるのではないでしょうか。 少々親しみを込めた話し方をして、お客様からお叱りをいただいたり(私にも若かりしころ、この失敗の経験! あります)、とにかく自分に任せておけば大丈夫、と自信を持って伝えたにもかかわらず、お客様との商談が、うまく進まなくなってしまった経験があるかもしれません。 しかし、これも「こうすれば失敗する」という貴重な経験があるおかげで、知らぬ間に蓄積されていく、失敗しないための貴重な経験知となるのです。 これらは、あなたの経験知の中の「(3)コンピテンシー=行動特性・人間性」です。
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