「殴り合いになるという結論だった」近江・前田高孝監督 前回4強の神村学園をMF鵜戸瑛士の後半AT弾で沈める
1月4日、第102回全国高校サッカー選手権大会準々決勝が各会場で行われ、さいたま市浦和駒場スタジアムで2試合が実施された。第2試合は神村学園(鹿児島)と近江(滋賀)が対戦した。 【フォトギャラリー】神村学園 vs 近江 2回戦から登場の神村学園は松本国際(長野)に2‐0で勝利。続く3回戦では神戸弘陵(兵庫)に2-1で勝利した。同じく2回戦からの出場の近江は日大藤沢(神奈川)をPKで下すと3回戦では明秀日立(茨城)にPK戦の末、勝ってベスト8入りを果たした。 国立行きを賭けた試合は壮絶な点の取りあいとなった。 前半12分、近江。MF 14浅井晴孔(3年)のパスを受けたMF7鵜戸瑛士(3年)が右足で決め先制。しかし18分、神村学園。右サイドDF7有馬康汰(3年)のクロスをFW13西丸道人(3年)が頭で合わせて、同点。さらに22分、DF15吉永夢希(3年)のクロスがそのまま決まり、神村学園が4分間で逆転に成功した。 追いつきたい近江は38分、パスカットからMF8山門立侑(3年)がドリブルを仕掛け、GKと1対1の状況を作ったが、わずかに外れ、同点ならず。神村学園が2-1で折り返した。 近江は後半13分、MF6川上隼輔(3年)のクロスに前半途中から起用されたMF13山本諒(2年)がヘディングで押し込み同点。しかし15分、神村学園MF14名和田我空(2年)が直接フリーキックを決め逆転。 これでなにかスイッチが入ったのか、近江が猛攻をしかける。神村学園、防戦一方のなか、26分、コーナーキックからMF13山本(2年)がふたたび頭で決め、3‐3の同点。このままPK戦突入と思われた後半アディショナルタイム。コーナーキックから最後はMF7 鵜戸(3年)が押し込み、近江が4‐3で競り勝ち、ベスト4進出を決めた。 取って取られて、追いついて、突き放す。80分間、終始一貫、攻め倒した近江。10117人の観衆を巻きこむ、熱い試合だった。 「相手のストロング、ウィークを分析するところで殴り合いになるという結論だった」。近江・前田光孝監督は覚悟を決めていた。 「最初から神村学園相手にゼロで抑えるのは無理なのはわかっていた。1点取られたら、2点。2点取られたら3点。3点取られたら4点と最初から殴り合うぞと」 「ウィークポイントはあるが、そこで勝負しても選手は楽しくない。自分たちのストロングでやろうと。そこに振り切れた。10:0、9:1くらいにそっち(攻撃)にメーターを振り切って」 強豪・神村学園といえど点の取り合いは百も承知。必然のスコアといえる。 「やり合うのはみんな好きかなと思う」とDF10 金山耀太(3年)が話すように、このような展開はお手のもの。 聞けば、前半3点リードで折り返されて、後半4点取った試合や、退場者出してからの逆転など、こうした経験が自信となった。さらに「PKにいく感じがしなかった、点が取れると思っていた(MF 7鵜戸)」と今大会、日大藤沢、神戸弘陵と強豪を倒したことで、さらなる自信へ変化した。だからこその目標としたベスト4進出。 「いままで(強豪校に)負けてきたので、ジャイアントキリングじゃないですが、こういう勝ち方が一番楽しいというのはDNAとしてしみこんでいる。近江は強豪校を食いまっせ、むかいまっせと今大会は出せてすごく頼もしい」そう語る前田監督には嬉し涙のあとが残っていた。 なお、近江は6日、堀越(東京A)と対戦する。 (文=佐藤亮太 写真=矢島公彦)