米ポートランドへの旅、ラグジュアリーホテルも実は「建物遺産」 歴史を満喫
連載《とっておきの旅》
米国北西部オレゴン州の最大都市ポートランド市。日本からはシアトルなど米国西海岸の都市やカナダのバンクーバー経由で到着できる。空港から市内、また市中でもライトレールと呼ばれる路面電車やバスで移動が容易だ。緑に囲まれたこの街は、サステナブルで地域に根差すライフスタイルが国内外から注目されている。建物や地域のもつ歴史を引き継ぎながら新しいものに適応させていくのが得意な街でもある。そんなポートランドの歴史を感じさせるホテルを紹介する。 【写真はこちら】小学校のボイラー室が趣のあるブルワリーパブに… 3つのホテルをチェック!
■100年前の小学校校舎がそっくりホテルに
ポートランド市には、モノの価値を新旧で測るのではなく「いいものはいい」という考えを大切にするカルチャーがある。それは、ダウンタウンの駐車場に大きな文字で書かれた「Keep Portland Weird(変わり者でいよう)」という言葉にもうかがい知ることができる。この言葉は、1969年開業のレコードショップ「Music Millennium(ミュージックミレニアム)」のオーナーが2003年ごろから使い出したフレーズらしい。このショップ自体、中古・新盤、ジャンルを問わずオーナーがよいと思うレコードやテープ、CDであふれかえっている。 そんなポートランドの価値観にのっとったような保存再生の取り組みを多数行っているのが、McMenamins(マクメナミンズ)である。ポートランドは、近隣のウィラメットバレー産のホップやオオムギ、ブルラン分水嶺のわき水などの原料を生かしたクラフトビール造りが盛んで、「ビアバーナ(ビール天国)」と言われるほどの地。創業者のマイクとブライアンのマクメナミンズ兄弟が1985年、教会を再生したオレゴン州初のブルワリーパブ(ビール醸造所にパブが併設されている施設)をオープンした。以来、古い教会や農場などの建物を取り壊さずに、ブルワリーパブやホテルに再生している。 ポートランド市北東部、15年に開校し75年まで使われていた歴史ある小学校の校舎を生かした「ケネディ スクール ホテル」も、マクメナミンズが手掛けた再生施設。57室のホテルで、97年に開業した。その前の年には国家歴史登録財に指定されている。ホテルの内部には、開校当時のアートワークや歴史的な写真が多数飾られており、1900年代初頭にタイムスリップしたかのよう。 かつての校長室はホテルオフィス、黒板が残る教室は客室だ。黒板には、宿泊者がチョークで落書きしたメッセージなどを残している。講堂は映画が楽しめるパブ。ソファに腰掛けて、おいしいビールを飲みながら、昼は子ども向け、夜は大人向けの映画が楽しめる。機械が詰まったボイラー室はブルワリーパブ。お仕置き部屋がシガールームというのは皮肉が利いている。 ティーチャーズ・ラウンジがあった中庭には温水プールがあって、宿泊者はもちろん、近隣の住民にも無料で開放している。ローカルを大切にするポートランド的な配慮である。