社説:学童の待機増加 安心に過ごせる質の整備を
共働き家庭の小学生を預かる放課後児童クラブ(学童保育)で、希望しても空きがなく、利用できない待機児童の数が増えている。 こども家庭庁の調査によると、5月1日時点で1万8462人(速報値)と過去最多だ。1年前の確定値と比べ、2千人以上も増加した。 学童に登録している児童数も151万5205人(同)と過去最多で、前年より5万8千人近く伸びている。 受け皿拡大は一定進んでいるものの、それを上回る利用希望者があり、需要に追いついていない実態が浮かび上がる。 待機児童の数は2015年に1万人を突破し、新型コロナウイルス禍で減少したが、22年から再び増加に転じた。引き続き受け皿の整備が欠かせない。 同時に問われるのは、学童保育の「質」である。 多数の待機児童が問題となった保育園では近年、受け皿拡大を優先させた結果、保育士の手が回らずに、不適切保育や事故発生の誘因になっている。学童保育でも、そうした傾向が指摘されている。 元々、学童保育は働く親の自主的活動から始まり、公営へと広がった。国は1クラスにつき、おおむね児童40人以下で、2人以上(うち1人は専門資格を持つ支援員)の職員配置を義務付けていた。だが、待機の増加や自治体などの要望もあり、「参考基準」に緩和した。 ニーズ拡大に応じて都市部を中心に大規模化し、基準を上回って児童を預かる「すし詰め」状態の施設も少なくない。 窮屈な環境の上に目が届きにくく、子ども同士のトラブルも起こりがちという。学童保育に行きたがらない要因の一つにもなっているようだ。 保育士同様、子どもを見守る支援員ら職員の人材不足は深刻化し、影響が生じている。 さいたま市では、隙間時間を活用した短期バイトを募るアプリを使い、資格がなくてもできる補助員を市の委託事業者が募集。面接や履歴書での資質確認もなかったことから、保護者らから批判を招いた。 長浜市では昨夏、学童保育中に屋外プールで男児が死亡した事故が発生。県内ではその後、支援員不足を理由にプール活動を取りやめる施設もあった。 城陽市では来年度から、運営を民間委託する。支援員の半数が60歳以上で、市が新たに募っても思うように集まらなかったためという。 関係団体の調査では、学童保育の職員給与は6割が年収200万円未満だ。1年契約の非正規雇用も多い。国、自治体は処遇を含む雇用環境の改善に本腰を入れるべきだ。 放課後の子どもが安心して安全に過ごせる居場所は、保育と教育の隙間を埋める重要な役割がある。社会で認識を深めたい。