<再びEUを挑発するのか>ハンガリー・オルバン首相の“議長国外交”に悩むEU加盟国
誤解を与える「平和ミッション」
7月にハンガリーがEU議長国となるや、オルバンは突如としてキーウ、モスクワ、北京を順次訪問したが、彼は一連の訪問を「平和ミッション」と称した。7月11日には、ワシントンでの北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席の後、マール・ア・ラーゴにドナルド・トランプを訪ねて会談した。 彼はかねてトランプと親密であり、トランプと会談したこと自体は驚きではない。何が話し合われたのか分からないが、オルバンはこれも「平和ミッション」と称している。 オルバンはウクライナ支援に反対する一方、直ちに和平協議を行うことを提案しており、トランプと立場を同じくしている。EUがトランプの返り咲きの意味合い、特に、彼の保護主義的貿易政策、彼の対ウクライナ政策(ウクライナ支援を停止し、ウクライナにロシアの条件による和平を強要しかねないこと)および、彼のNATOに対するコミットメントの信頼性について懸念を深め、特別のチームを編成して対応策を研究しようという状況にある時に、オルバンがトランプとの親密さを誇り、トランプ再選の暁に何が出来るというのか、理解出来ない。
EUの統一的な外交方針を無視したオルバンの一連の勝手な行動をEUは看過し得るはずもなく、8月末にブタペストで予定されていた外相理事会の開催地をブリュッセルに変更したことは、EUとして最小限必要な措置だったと言い得るであろう。
オルバンは今後、どう動くのか
この論説は、EUと加盟国の予想外の厳しい反応に驚いたのか、オルバンは当面おとなしくすることとしたが、この秋には再び挑発に出る可能性があると予想している。特に、米国の大統領選挙との関連で、オルバンが選挙日の2日後の11月7日にブタペストで開催予定のEPC(欧州政治共同体)の会合にトランプを招待する可能性などを書いているが、これは些か想像力の飛躍ではないかと思われる。しかし、このところのオルバンの行動に照らせば、あながち突飛な想像として片付ける訳にも行かないのかも知れない。
岡崎研究所