自治体の「婚活」支援 どれくらい効果はあるの?
「効果」に関する明確な調査はない
講演や県民運動といったこれら「官製婚活」には、実のところ、どの程度の効果があるのでしょうか。 実は政府が支援に乗り出す相当前、2000年前後から郡部を中心にして、各自治体は独自に婚活事業を手掛けてきました。日本青年館結婚相談所が2003年度からの2年間に全国2253市区町村を対象に実施した調査によると、約半数が「出会い事業」を軸に何らかの支援を実施していました。1万人未満の自治体では、その割合は70%近くになっています。体験農業に都市の女性を呼ぶといった試みはその典型例でしょう。 ただ、結婚に至るには普通、お付き合いの時間が必要です。民間業者のように、出会いから結婚までを自治体が丁寧にフォローすることは現実的ではありません。自治体にそれを願う人もほとんどいないでしょう。そうしたこともあって、行政の婚活がどの程度結婚に結びついたのか、明確な包括調査はないようです。
イベント中心の支援に懐疑的な見方も
福島大学の千葉悦子教授は、行政による単発的な婚活支援に疑問を示し、「たった1~2回のお見合いパーティーでカップルができると考えるほうがおかしい」と指摘したことがあります。それよりも、地域社会や職場での居場所を失いがちな若者の生活・就労環境を改善し、日常の中で男女がふれ合う機会を増やすようにすべきなのだと言及。イベント中心の行政の事業は早晩限界を迎える、と言っています。 雇用問題と結婚との関係も、あちこちで指摘されています。派遣社員やアルバイトが中心で、雇用や収入が不安定な多くの若者は「結婚」という将来像よりも、日々の「忙しい」「給料が安い」「毎日がつらい」を何とかしてほしい、と考えています。 内閣府が2010年度に実施した調査によると、男性の年収と結婚には明確な相関関係がありそうです。30代では、年収300万円未満の既婚率が9.3%。一方、300万円~400万円では26.5%、600万円以上は37.6%。年収が少ない男性ほど、結婚との距離は離れていくようです。 こうした数字や実例をもとに、例えば、熊本日日新聞は昨年の連載記事「くまもとの明日」で、収入が安定すれば自信を持って女性を誘える、正社員になることが婚活の入り口、といった声を紹介しています。 「30億円の政府支援なんて、いかにも役人が考えそうなこと」といった冷ややかな視線の背景には、こういった雇用問題が影響しているのかもしれません。