名前こそ「スマート」だけど……これがスマート!? インドネシアに上陸した「スマート#3」は実質「中華BEV」だった
インドネシアにスマートが再来!
2024年7月17日夕方、GIIAS(ガイキンド・インドネシア国際オートショー)2024プレスデーにおける、メルセデス・ベンツ2回目のプレスカンファレンスに顔を出すと、スマートブランドのBEV(バッテリー電気自動車)となる#3のインドネシアデビューと、インドネシアにおけるメルセデス・ベンツの総合販売店であるインチケープ社との戦略的提携についての調印式が行われていた。ちなみにインドネシアではスマートブランドは一度撤退しており、今回は再参入ということになる。 【画像】スマート#3のブラバス仕様の画像を見る 会場ではデビューした#3を見て、そのボディサイズの大きさもあるが、スマートブランド車というイメージが伝わってこないとの声が聞かれた。スマートといえば、やはりマイクロコンパクトモデルとも呼べる、フォーツーやフォーフォーの印象があまりにも強い。過去には三菱コルトとプラットフォームを共用した、初代フォーフォーもかなり個性的なスタイルであった。 ただ、今回展示されている#3はどこか中国車の匂いが……というキャラクターからもわかるとおり、2020年スマートブランドは、中国の浙江吉利控股集団(ジーリー)とダイムラーの折半出資により、合弁会社(智馬達汽車/スマート・オートモービル)を設立している。 これは単なる中国国内展開を考えた合弁会社ではなく、世界市場でのスマートブランドのオペレーションや製品開発も行うこととなり、事実上、いまのスマートブランドは中国系ブランドになったといってもいいだろう。ダイムラーとの合弁会社ブランドと聞けば聞こえはいいが、ダイムラーの筆頭株主はいまやジーリーになっていることを考えると、いまのスマートブランド、そしてスマート車への見かたも大きく変わることになるだろう。
スマートを武器に形成逆転を狙う!?
プレスカンファレンスでも、インドネシアのメルセデス・ベンツ現地法人のCEO以外に出席した幹部以外は、現地インドネシアの人というよりは、中国の人と思われるメンバーばかりであった。口の悪い事情通はジーリー自体は展示ブースを構えていないが、事実上ジーリーがスマートとして出展したようなものだといっていた。 スマートのリリースでは、プレミアムBEVという表現を多用していた。そして、インドネシア国内のメルセデス・ベンツディーラーでスマート車の販売を行うとしていた。 インドネシアだけではなく、タイなど東南アジアへの進出が目立つ中国系メーカーは、日系メーカーではラインアップの少ないBEVを旗印に市場進出している。だが、東南アジアでは新車購入においては再販価値を重んじる傾向がより目立ち、その面では圧倒的優位性を誇るのが日系メーカー車だ。なので、中国系メーカーは遠く及ばない状況にあり、結果的にタイでは中国メーカー同士で値引きなどによる乱売なども目立ってきている。 その意味では、メルセデス・ベンツディーラーで買える、プレミアムBEVとすれば、ほかの中国メーカー車とは一線を画すことになるだろう。 ジーリーはいまでもダイムラーの資本が入っているので、欧州市場の中国製BEVへの関税引き上げをスルーするための隠れ蓑に使われるのでは? との話もあるが、中国製テスラ車も関税引き上げの対象になるとの話もあるようなので、そこまでは狙っていないようである。 今後、ジーリーは世界市場においてジーリーブランドのBEVではなく、スマートブランドのBEVとして展開していくつもりなのだろうか。事実、今回のインドネシア市場再参入により、すでに世界の29の市場に新スマートとして市場進出しているとし、さらに2025年には、いままでにないスマート車を発売するとしている。 少なくとも、多くの日本人が抱くであろうスマートブランドとは、名前は同じでも異なるブランドになってしまったと考えたほうがよさそうである。
小林敦志