【コラム】守田英正の考え方に訪れた変化「いま思うと自分の課題を放棄して提言していた」
【サッカー日本代表 最新ニュース】森保ジャパンの要の1人、守田英正のコラムをお届け。失意のアジアカップからW杯アジア最終予選、そしてチャンピオンズリーグで体感した世界最高峰の戦いを通して、守田の思考は変化し続けている。 【動画】守田英正が1G1Aの活躍!|ブラガ×スポルティング|ハイライト
11月5日、舞台はポルトガルのエスタディオ・ジョゼ・アルヴァラーデ。マンチェスター・シティをホームに迎えたスポルティングは、強敵相手に先制点を許しながらも、前半終了間際に追いつくと、後半に3つの得点を加えて逆転勝利を果たした。ルベン・アモリム監督のホームラストゲームともあって歓喜に沸くスタジアム。誰もが目の前の勝利を祝福していた。 ただ、自身のボールロストから先制点を献上するなど、攻守に普段以上のプレーを見せられなかった守田英正の表情は芳しくなかった。その真意は試合後の言葉を聞けばよくわかる。 「勝ったから良かったものの、個人的なパフォーマンスで言えば、結構難しい試合というか……。個人的に今日はたぶん両チーム合わせても最低評価くらいだったかなと思うんですけど、それが今の自分の位置付けなんだろうなとも思う。でも、悲観的にならず、また次のビッグゲームがあった時に自分が勝たせられたらいいのかなと思いますし、そういう日もあると前向きに捉えるしかないですね」 ここ最近、日本代表戦を含め、取材に行った試合では常に守田は輝いていた。秀でた戦術眼を披露しながら、守備ではボール奪取能力の高さを見せ、攻撃ではスルスルと前線に上がってはゴールに絡んだ。今の日本代表を見ると、守田を中心にチームが回っていると言ってもおかしくないくらい、パフォーマンスの良さが際立っている。 しかし、世界トップクラスの実力を持つマンチェスター・シティを相手に守田は苦戦を強いられていた。もちろん、相手がダブルボランチの脇を突けるように中盤の枚数で数的優位を作っていたことも一因である。ボールの取りどころが難しく、プレスにいってもすらすらかわされた。それに加えて、一人ひとりの個の能力の高さに翻弄される場面も。これがチャンピオンズリーグのレベルか、とピッチを見ながら感じざるを得なかった。 それでも、試合後には自分の実力を冷静に判断しながら、ここからさらにレベルアップしないといけないと奮起する男の姿があった。悔しさを感じるとともに、このレベルの相手と戦うことの意味を守田はしっかりと理解していた。 「ああいう相手と当たり前に対抗できるようにならないといけない。それこそ日本代表で世界一を取る、優勝したいと掲げている以上は当たり前に戦えないといけないと思っています」 この意識の高さが日本代表を新たなステージへと押し上げている。 守田はアジアカップ敗退後、森保一監督を中心とする日本代表に対して提言することを選択した。「正直、アドバイスとか、外からこうした方がいいとか、チームとしてこれを徹底しようとか、もっと提示して欲しい」と。このままでは前に進めないと感じ、今こそ言うべきだと判断した上で発言した。 ただ、改めて振り返った時、自分はピッチの上で何かを残せていたのか、何ができていたのかと考えてみた。そして、その発言は自分勝手だったのかもしれないと思い直すことになる。「その時はそうじゃないと思っていたけど、いま思うと自分の課題を放棄した上でチームに提言していたなと思うんです」。 これまではどうしても「良くも悪くも人に影響されてしまう選手」だったことで、周りに頼り切りになる場面も少なくなかった。チームにいい循環をもたらす黒子役としては確かな存在感を放っていたが、自分がチームを引っ張ったり、結果を残して勝利に導いたりすることはできていなかった。 だからこそ、守田は次なるステージに進むため、今までの思考を少し変えてみることにした。 「アジアカップに負けたことによってもう一回、自分の力で目の前の敵を剥がす、個で打開するというのを意識するようになった。球際やデュエルのところもそう。その上で、もっと(チームとして)こうした方が楽だなと考えるようになった。そうやってちゃんと考え方のステップを踏めるようになったと思います」 W杯アジア最終予選では“攻守”に違いを示す守田の姿がある。ビルドアップに関わってボールを配球するだけでなく、自らボールを運んでアクセントをつける。チャンスと見るやゴール前に入り込み、バーレーン戦では2つのゴールを奪取、サウジアラビア戦では鎌田大地のゴールをアシストした。 加えて、自分の力を発揮するだけでなく、周りと積極的にコミュニケーションを取りながらピッチ上で戦術的な変化をつけ、仲間の力を引き出すに至っている。 欧州最高峰のレベルで経験を積み、日本代表の中でも進化を続ける守田。絶対的な柱になりつつある男は、11月のW杯予選でも自らの力を前面に出していくことでチームを勝利に導いてくれるはずだ。 文=林遼平