初出場の九州大会で「キャノン」発動だ!福岡・育徳館を支える主将で4番の扇の要【トマスさんの特命リポート】
九州の高校球児情報に精通したアマ野球ウオッチャー「トマスさん」が丹念な取材でリストアップした好選手を紹介する「特命リポート」―。今回は、26日に大分県内で開幕する九州大会に初出場する育徳館(福岡)の隅田勇輝捕手(2年)を取り上げる。来春の選抜大会出場校を選ぶ参考資料となる大会で、扇の要としてチームを引っ張る活躍が期待される。 ■アマ野球観戦は年間約200試合 トマスさんとは… ◇ ◇ ◇ 3年前の7月。当時、福岡県行橋市の中京中2年だった隅田捕手は、同市中学校軟式野球大会決勝で、県ベスト8進出へと勢いつけるサヨナラ打を放った。しかし、当時のインタビューでは、歯切れが悪かった。 「(送球ミスでやらかして)どうしても取り返したかった」 そこから成長した姿が見られたのは、今秋の第155回九州地区高校野球福岡大会準決勝の東福岡戦。捕手として、主将として出場した隅田は、初回と4回に相手の二盗を防ぐ強肩を披露した。 「(エースの)島(汰唯也)のように地肩が強くないですが、フットワークの良さは小中学校からの指導者のおかげです」 なるほど、捕ってからが俊敏だ。中京中時代の名伯楽・福井慎也先生の指導が生きている。腰を落とし、左右の足を交互に前後10回動かし、次に開脚で10回動かす。さらにこの二つの動作をミックスさせた10回のフットワークを中学校時代に5セット。高校では20回をこなしてきた。「上で野球をやる」。そのためのメニューを愚直にこなした結果だ。 この練習によって「下半身に力がついた」ことで、粘りのある柔らかい打撃にもつながった。準決勝は2本の二塁打を放ち、4番の重責を果たした。最初の二塁打は、3点リードされた4回。チーム初長打としてチャンスを広げた。 「思い切りのよさ」を自負する主将として、4回裏の攻撃の前のベンチ前ミーティングでは「積極的に打っていこう」とチームを鼓舞した。これまで低目の球に空振りし、甘い初球を見逃していた味方打線にお手本を見せるように、初球のアウトコースのスライダーを逆方向に運んだ。この一打から1点をかえし、最終的に10―9で逆転勝利を収め、九州大会の出場につながった。 主将の隅田について、井生広大監督は「周りがよく見えている」と評する。隅田は「チームを助ける一打」という言葉を二度も口にしており、献身的な主将であるという印象をさらに強くした。九州大会での目標は「神宮大会出場と言いたいところですが、先を見すぎると足をすくわれる」と冷静に話して「まず一勝」と強調した。 大好きなソフトバンク甲斐拓也の動画を見て自己流にアレンジした送球スキルは大きな特徴。「甲斐キャノン」のような盗塁阻止の場面を再び発揮して、九州大会を席巻したい。
西日本新聞社