新紙幣で廃業危機…地方ラブホテル、自動精算機の買い替えで「1000万円」吹き飛ぶ事態に
●新型コロナきっかけで店舗削減を余儀なくされた
静岡県内のレジャーホテルチェーンから、34歳で独立した当時はバブルの真っ只中だった。そんな状況でもホテルセーラは閉業したラブホテルを買い取って居抜きで改装したり、その改装も極力自分たちの手でおこなうなど、徹底的にコストを下げてきた。コテージ形式の駐車場付き平屋が並ぶ赤堀店(群馬県伊勢崎市)も、買い取ったときは荒れ果てていたそうだ。 「当時は敷地内に入れないぐらい草ぼうぼうで、まさに廃墟が並んでる状態でした。それを土地代込みで約3000万円で購入して、改装費に約1000万円、自動精算機導入に約500万円かけました。18部屋で1000万円の改装費は非常に低コストですが、自社で内装を施工することには費用を抑える以外にも意味があるんです。 壁紙一つとっても、業者任せにして、はがしにくいものにしてしまうと施工に時間がかかりますが、自分たちでビニールクロスを張れば数時間でできます。また壁紙の柄合わせにもこだわらなければ、資材のロスが減らせます。 また工務店に発注して設計士が考えたシャンデリアを付ければ、維持に手がかかります。でも照明器具を天井に直付けすれば、掃除の手間も省けてほこりもたまりにくい。『できることは自分たちでやる』を徹底した結果、一時は7店舗まで増やすことができました」 もう1店舗増やそうか――。そう考えていた最中にコロナ禍に見舞われ、そこで初めて「自分たちが差別を受ける対象だった」ことに気づいたという。 「お客さんが全然来なくなって困っているのに、公的な支援は一切ありません。GoToトラベルや持続化給付金、固定資産税の免除措置からも排除されてしまって、『差別っていうのはこういうことなんだ』と初めて気づきました。それまでは『資本主義は競争社会だから勝つしかない、弱い奴が負けて強い奴が勝つんだ』なんて考えの、ガチガチの自己責任論者だったのですが・・・」 市東さんはSNSで現状を訴え、関西の性風俗店が持続化給付金から除外されたのは「法の下の平等」に反すると国を相手取った「持続化給付金等支払い請求控訴事件」の原告側協力者にもなった。まさに差別体験を機に「声をあげる経営者」に生まれ変わったのだ。しかし、ホテルセーラも事業規模を縮小せざるを得なくなったという。 「行政の対応が不公平なことは、担当者もわかっているはずです。だって、レジャーホテル業界を公的支援から外さないとならないという法律は、どこにもありませんから。『ラブホテルの経営者の多くは反社会勢力』という噂も根拠がありません。なのに『国民の理解が得られない』から排除するなんて、そんなバカな話があるかと。 とはいえ、約70人の従業員のためにも、経営努力で乗り切るしかない。私は担保にできる物件があったので、銀行から借り入れして店舗も一部売却して、4店舗まで減らしてしのいでいます。売り上げそのものもコロナ前と同水準とは言えませんが、回復基調にあります。だから『自助努力で頑張ろう』と前を向き始めたところに、まさかの自動精算機問題が勃発して。新たにもう1店舗売却する決断をしました」