夏休みが長くて苦しい…ディズニーランド行った自慢や自由研究で露呈する「残酷な格差」
「遊ぶ相手がいない」という現実
こうした状況は地方でも深刻で、中学受験が過熱していない地域であっても子どもたちが塾や習い事で遊ぶ相手がいないというケースがある。少子化で学校や公共施設が統廃合されることで児童館や公園が近くになければ、遊びに行くにも親の送迎が必要な地域もある。親の就労状況や家庭状況は、子どもたちが一緒に遊ぶという体験にまで影響を与えている。 美知子さんの息子のクラスメイトの家庭を見ると、父親は年収1200万円以上で母親は専業主婦というようなケースが少なくない。美知子さん夫婦は共働きで世帯収入が1200万円。国税庁「民間給与の実態調査結果」によれば、2022年の東京国税局での平均給与が年527万3000円。美知子さん夫婦の収入は平均を上回っているため他の家のように家計から体験の消費に回す余裕がないわけではないが、作られた体験をさせることに釈然としない思いがしている。 『体験格差』(講談社現代新書)では、幼い時期から継続的に生じる「体験格差」の実態を明らかにするため、筆者の今井悠介氏が代表理事を務める公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンが2022年10月に日本で初めて実施した「子どもの体験格差に特化した全国調査」の内容が記されている。2000人以上の保護者がアンケート調査に回答すると、年収300万円未満のいわゆる「低所得家庭」では、子どもたちの約3人に1人が過去1年間で「体験ゼロ」だった。 体験ゼロとは、スポーツ系や文化系の習い事の参加もなければ、家族旅行や地域のお祭りなどへの参加も含めて「何もない」ということ。放課後の体験も休日の体験も、すべてゼロという子どもが全体の15%を占めた。「体験ゼロ」の割合は、年収300万円未満と年収600万円以上とでは2.6倍の差が生じた。 文部科学省の「子供の学習費調査」では、学習塾や家庭教師などの「補助学習費」と「その他の学校外活動費」の支出額が分かる。スポーツや音楽などの習い事、キャンプなどのレジャーにかける「その他の学校外活動費」を見ると、公立小学校に通う小学生の家庭では世帯年収400万円未満の家庭で年間7.9万円だが、世帯年収1200万円以上の家庭で年間20.1万円となり、2.5倍以上の格差がある。