「ケチさと目ざとさにかけては天下一品」「製薬会社とは名ばかり」 小林製薬の強欲すぎる企業体質とは【紅麹サプリ問題】
企業のガバナンスに大きな欠陥が
04年、弟の小林豊氏に5代目社長の座を譲ると、一雅氏は会長に繰り上がった。13年以降は、長男の小林章浩氏(52)を6代目社長に据えている。19年に豊氏は死去したが、今も一雅氏は代表取締役会長として君臨し続けている。 「カリスマ経営者の一雅さんは一般の社員に声を荒らげるようなことはさほどしませんが、幹部には厳しい。会議で中途半端な提案が出ようものなら、平気で罵声を浴びせます。特に息子の章浩さんには容赦がなかった。ある時、100名以上は集まっていた業界団体の新年会で章浩さんがきつく怒られて、しゅんとしていたのが印象的でした」(同) このたびの紅麹サプリが原因と思しき健康被害について小林製薬は、今年1月11日に患者から最初の連絡を受けている。しかし、記者会見を開き被害の実態と自主回収を公表したのは2カ月あまりがたった3月22日のことだった。亡くなった5名の中には、この間にもサプリを購入していた人がいたとみられている。 企業ガバナンスに詳しい青山学院大名誉教授の八田進二氏はこう憤る。 「食品や薬を取り扱う企業にとって最大のリスクは健康被害で、そのダメージを最小限に抑えるためには迅速な情報公開が必須です。まずは健康被害を広がらせないための対策を優先するのは当然のこと。社内の人間はどうしてもネガティブな情報を隠蔽(いんぺい)したり問題を先送りしたりしがちなので、そうならないためにも高額な報酬で社外取締役を選任しているわけですが、このおよそ2カ月間あまり彼ら彼女らは何をやっていたのでしょうか。社外取締役も含めた企業全体のガバナンスに大きな欠陥があったと言わざるを得ません」
「章浩さんは優しくて線が細い」
先月28日の株主総会では厳しい質問が株主から相次ぎ、社長の章浩氏が涙ぐむ場面もあった。 「社内のイベントで提供するお弁当の種類にまで口を挟んでくる強烈なワンマン会長の一雅さんに対して、章浩さんは優しくて線が細いタイプ。先日の株主総会で泣いているのを見て“やっぱり”と思った関係者は多い」(前出の同社関係者) 章浩氏は15歳の時に母を亡くした。それまで両親の仲は円満ではなかったともいわれるがグレることなく、父の一雅氏に忠実に人生を歩んできたようだ。慶應大経済学部を卒業後、花王での修業期間を経て98年、小林製薬に入社した。 「とにかく小林製薬は一雅さんの存在が大きすぎて、今もそのくびきから解き放たれていません。章浩さんが社長に就任してから10年以上たちますが、これといったヒット商品を生み出せておらず、大まかな経営方針も変わっていない。とはいえ、無駄な投資を極力避ける高収益体質が維持できているので、23年12月期まで26期連続の最終増益を記録してきました」(同) 後編では、医薬品の治験の際に被検者の身長を改ざんした問題など、ずさんな開発体制などについて報じている。 「週刊新潮」2024年4月11日号 掲載
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