【大学野球】投球術を駆使するクレバーな東大・渡辺向輝 プロへの思いを強めるサブマリン
「野球を続けるならば、父親を超えたい」
先発に定着した今秋、開幕カードの早大2回戦では2回7失点と力を出し切れなかったが、この1敗を機に、投球スタイルを修正。「常に打たせて取ることを心がけている」と、ギアチェンジしない投球に徹した。すると、明大1回戦では8回無失点と試合を作る。慶大戦は先発2試合で結果を出せなかったが、法大2回戦ではリーグ戦初勝利を2失点完投で飾った。かつてアンダーハンドとして活躍した父・渡辺俊介氏(元ロッテほか、日本製鉄かずさマジック監督)からのアドバイスにより、シンカーの配球に手を加えたという。 なぜ、110キロ台のボールで勝負できるのか。サヨナラ2ランを放った立大・柴田は明かす。 「ゲーム前までは、緩いボールに泳がされないように、ポイントを近く、逆方向を意識していました。ただ、実際に試合に入ると、さされる(詰まらされる)。前(のポイントで)で行こう、と。(チームが収集した)データと、実戦でのギャップがありました。映像でタイミングを合わせてきましたが、渡辺投手のボールには、キレの良さがある。(映像と)本来とは違う感覚でした。バッティングの気持ち悪さがありますので……。(本塁打の打席は)前で打とう、と。体現できました」 渡辺はこの秋の最終カードとなる立大1回戦は、敗戦投手となったものの、5安打3失点。ゲームメーク能力の高さを披露し、すっかりピッチングのコツをつかんだようである。 初勝利を挙げた法大2回戦後、本誌取材に大学卒業後の「プロ志望」を明かしていたが、この日、改めて、進路について言及した。 2日前にはドラフト会議が行われ「可能性があるならば(プロ志望届を)出してみたい。来年になってみないと分からないですが、現実を見ながら判断したい」と語った。 社会人野球からの勧誘については、断っているとのことで「野球を続けるならば、父親を超えたい。プロの可能性があるならば、続けたい」と力を込めた。トップレベルのステージを目指す上での課題も自覚。「細かい制球力が必要。球速はあと3キロから5キロ上げていかないといけない。球の強さ、質には不安はない。一番は、制球力です」と話した。 渡辺は今秋、3カードで1回戦の先発を務め、エースとしての足場を固めた。学生野球は残り1年。167cm61kg。東大入学後に腕を下げ、血のにじむような努力と工夫で、対戦する五大学と互角に戦えるだけの心技体を作り上げてきた。まだ、秋のシーズンは終わっていない。東大は立大2回戦で雪辱し、渡辺は勝ち点をかけた3回戦に向け準備する。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール