サザビーズがニューヨーク州に約9億円の和解金。脱税ほう助の疑いに対し「不正行為は一切認めない」
オークションにおける高額アート作品購入に課せられる税金の回避法をクライアントに助言したとしてサザビーズに対して起こされた訴訟で、同社は625万ドル(約9億7000万円)の和解金を支払うことに合意した。 この訴訟は、2010年から2020年の間、サザビーズが少なくとも8人の個人の顧客に、再販のために作品を購入する販売業者に消費税の支払いを免除することを目的とした「再販証明書」の申請をさせ、ニューヨーク州に対して数千万ドル相当の美術品に対する脱税をほう助した可能性があるというもの。同州はサザビーズに対する4年間の調査を経て、2020年末に初めて訴訟を起こした。 レティシア・ジェームズ州司法長官は公式声明で、サザビーズが「意図的に法律を破った」と述べ、顧客が数百万ドルの税金を回避するのを助けたと主張している。同社は、時にはクライアントに再販証明書の提出を積極的に勧め、記入を手伝っていたという。 US版ARTnewsの取材に対してサザビーズの広報担当者は、「同社は不正行為を一切認めておらず、今後も引き続き全ての法律の完全な遵守に努めていきます」と回答し、そして、「これらの申し立ては10年以上前のものであり、サザビーズは、ニューヨーク州が2018年に起こした他の再販証明書の偽造の訴訟でも協力し、数多くの資料を提出しています」と述べた。 2018年の訴訟というのは、ポルサル・エクイティーズ(Porsal Equities)社が同様の再販証明書の悪用により1075万ドル(約17億円)の和解金を支払った件のことだ。 サザビーズの2024年上半期の収益は昨年比20%減の32億ドル(約5000億円)で、さらに現在16億5000万ドル(約2552億円)の債務を抱えている。だがこのほどアブダビの政府系ファンドADQとの10億ドル(1546億円)の投資契約を締結した。そのうち8億ドル(1237億円)が債務返却に充てられるという。 その一方で、サザビーズは今年、大幅な拡大を遂げている。7月には香港にフラッグシップ拠点を、9月にはパリに新本社をオープンした。さらに11月初めに同社は、ホイットニー美術館とフリック・コレクションが入居していた歴史的建造物、ブルーアー・ビルディングを取得した。同ビルはヘルツォーク&ド・ムーロンによって改装され、2025年秋にニューヨーク本社ビルとしてオープンする予定だ。(翻訳:編集部)
ARTnews JAPAN