「デキがイマイチなので無料でいいです」。レギュラーメニューを持たない、超自由な運営の異色ラーメン店。ラヲタ店主の“異様な熱意”の背景には、「脱ラヲタ」を掲げ、「自分らしさ」を追求した店舗運営があった。
そういう意味では、その土俵から降りることは昨今の風潮から見れば逆張りでありながら、地域のラーメン店として生きるという「原点回帰」的なものとも言えるだろう。 ■「脱ラヲタ」が独自の店作りに繋がった まずはレギュラーメニューをなくした。ラーメン店といえばお店の看板メニューが必ずあるものだが、レギュラーをなくすことによって毎週違うラーメンを提供するお店になった。 さらには、固定の営業時間をやめた。毎日X(旧Twitter)で営業開始直前に今日のラーメンと営業時間を呟く方式に変えた。
元住吉時代から限定ラーメンは月イチで作ってきていて、経験値としてレシピの蓄えはあった。元々ゼロイチのものづくりが好きだということもあり、同じメニューを作り続けるよりは毎週違うものを作ったほうがストレスが少ないというのもあった。自分らしい、店の在り方の模索は続いた。 営業時間に余裕が出るようになって、道理さんは再びラーメンの食べ歩きを始めた。もともとはインプットがないとアウトプットができないからという理由で再開させたが、実際に食べ歩いてみるとその楽しさに改めて気づいた。
「喜多方ラーメンを作ろうと思ったときに、そういえば現地に行ったことがないことに気づいたんです。そこで“研究”という名目で回り始めたのですが、どんどん楽しくなってきて、そのまま自分がラヲタになってしまったんです。これは完全に『渡なべ』の渡辺樹庵さんの影響です」(道理さん) 道理さんが専門学校時代から大好きだった「渡なべ」の店主・渡辺樹庵さんは、ラーメン店主の中でも屈指のラヲタとして知られ、全国のラーメン店をくまなく食べ歩いている。地方の細かなご当地ラーメンにも傾倒していて、その味を再現しイベントやラーメン施設で提供することでもよく知られている。
道理さんは以前から「渡なべ」の周年イベントに行ったり、パーティーで挨拶したりと樹庵さんと面識があったが、その後親睦を深め昨年から樹庵さんのYouTube番組にゲストで出るようになった。 「樹庵さんの番組で『ラーメン屋さんってあまり食べ歩きしていないですよね』と不用意な発言をしてしまい、ここから自分も真剣に食べ歩きをしないとなと思い、どんどん杯数が増えていきました。そのまま食べ歩きが面白くなって、いつのまにかラヲタになってしまったんです」(道理さん)