「韓国が納得するまで謝る」イシバは“第2のハトヤマ政権”だ… 尹錫悦が期待する根拠
アジア版NATOを提唱
――落ち着いて日本を見ていますね。 鈴置:期待しすぎると反動が怖い、とカン・チョルグ教授が心配している様子が目に浮かびます。ただ、韓国人にとって「イシバの福音」は歴史問題での譲歩に留まりません。日米関係の悪化に伴う韓国の外交的な地位向上も期待できるのです。 石破政権では鳩山政権並みに米国との関係が悪化しそうです。米国のアジア専門家の間では石破首相は媚中派と認定されています。例えばアジア版NATO(北大西洋条約機構)。2022年6月に出版した『異論正論』の6ページでは以下のように記しています。 ・日米同盟だけでなく、アジア版NATOのようなものを構築すべきだ。これは私の20年来の持論です。この地域には日米だけでなく、アメリカと韓国、アメリカとフィリピン、アメリカとオーストリア、ニュージーランドなどの同盟関係がすでにあります。 ・(中略)一気に多国間の安全保障体制を構築するのは難しくても、それぞれの同盟を有機的に機能させることから始め、徐々にマルチな関係を広げていけば、やがて大きな集団的安全保障体制を育てていくことは可能です。
韓国なら米中双方と同盟
――どこが「媚中派」なのでしょうか。 鈴置:米国のトラの尾を踏んだくだりは、これに続く7ページにあります。以下です。 ・私が考えているアジア版NATOは、その本来的な集団的自衛の組織というよりも、今世紀に入って欧州において果たしている集団安全保障的機能に重きを置いているので、中国に対しても「平和を維持するための仕組みですから、ぜひ中国も参加してください」と言うべき性質のものです。 この部分により、日本でも米国でも「石破氏は中国とも同盟を結ぶつもりだ」と見なされたのです。それが現実に可能かは首を傾げる向きがほとんどですが、唱えるだけで日米同盟の希薄化につながります。日米が中国との戦争に備えている最中に、「中国とも同盟を結びたい」と言う首相が日本に登場したのですから。 韓国に反米政権が登場すると、中国政府関係者が韓国の要人に「米韓同盟は結んだままでいいから、中国とも同盟を結んだらどうか」と持ちかけます。 決して荒唐無稽な呼びかけではありません。中国への恐怖心から韓国人の多くが「米中の間では中立を保ちたい」と願っています。米国さえ許せば「中韓同盟」が結ばれるでしょう。石破氏のもとへも中国の使者が来て、米中双方と同盟を結べ」と説いているのかもしれません。