「韓国が納得するまで謝る」イシバは“第2のハトヤマ政権”だ… 尹錫悦が期待する根拠
韓国が相次ぎ仕掛ける罠
――新たな宣言のどこが問題なのでしょうか。 鈴置:尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は新宣言について「仏独が1963年に結んだエリゼ条約のような不戦の誓い」と説明しています。日本が「韓日版エリゼ条約」に応じれば1910年から1945年までの間、法的には日韓両国は交戦国の関係にあり、併合ではなかったと認めることになります。つまり、「韓国は植民地になったことなどなかった」と日本も認定したことになるのです。 ――罠なのですね。 鈴置:その通りです。尹錫悦大統領も10月10日、ラオスで石破首相と初めて会談した際、「2025年は韓日国交正常化60周年を迎える年として、両国関係の希望に満ちた未来像を提示し、両国国民が関係の飛躍を体感できるように緊密に協力していけたらと思う」と冒頭で述べました。「エリゼ」とは言いませんでしたが、新宣言を催促したのです。 「エリゼ」に限らず、「佐渡島(さど)の金山」の世界遺産登録の際にも、前の駐日韓国大使は新潟県まで押しかけ「金山で働いた朝鮮人労働者は強制連行だった」と認めないと登録に反対すると威嚇しました(「世界遺産登録に難クセ 『佐渡金山』を突破口に『日本統治不法論』を認めさせたい韓国」)。 実際は、朝鮮人労働者は初めは自由意思で働き、太平洋戦争の末期に徴用に切り替わったのです。しかし、「強制連行された労働者」ということにしておかないと、韓国は格好が付きません。 徴用工だったと韓国が認めれば、「徴用」は戦時に自国民を動員するものですから、当時の朝鮮人は大日本帝国の臣民だった――朝鮮は日本の植民地だったと認めることになります。 一方、彼らが自由意思で募集に応じて働いたのなら、「日本帝国主義に朝鮮人が多数協力していた」証拠になってしまいます。「強制連行」と認めさせてこそ、韓国は「不法な植民地統治」を日本が認めたと言い張れるのです。
キリスト教徒だから靖国に行かない
――韓国の言うことは罠だらけ、なのですね。 鈴置:それに関しても『韓国消滅』で詳述しています。ちなみにこの本の帯のキャッチコピーは「日本への提案はほぼ罠」です。 ――石破政権誕生で宿願が果たせると韓国は大喜び……。 鈴置:ただ、石破政権の基盤が弱いことから、韓国が思うように操れるとは限らない、との慎重論もあります。 左派系紙、ハンギョレは培材大学のカン・チョルグ教授の寄稿「石破新首相に過度な期待は禁物」(10月3日、日本語版)を載せました。「過度に期待できない」理由の部分を引用します。 ・多くの韓国人たちは石破首相がキリスト教徒であるうえ、歴史について一部反省しており、靖国神社を参拝しないという理由だけで過度な好感を示している。ところが、石破首相の親韓的発言は、国会議員時代の発言に過ぎず、首相としての重みは違う。 ・むろん、石破首相の歴史観が安倍晋三や菅義偉ら元首相たちよりは韓国に融和的なのは事実だが、独島問題については日本の領土だと主張しており、また、議院内閣制の日本で首相一人だけの力で大きな影響を及ぼすのは難しい。結局、日本の首相として日本を代弁するため、歴史問題において日本政府が一歩前進した動きを見せるのは難しいだろう。 ・したがって、石破氏が政権獲得後、韓国の望む水準まで前向きな姿勢を見せるという過度な期待は禁物だ。今後、韓日関係に及ぼす新首相の政治的メカニズムと政治性向を分析し、冷静に対処していく必要がある。