5度克服した男性が語る「がん治療が残した障害」 治療には必ずメリットとデメリットがある
その他、体力の低下、発熱しやすさ、疲れやすさ、髪の毛が細く少なくなった、左足の痺れ、顔の皮膚の白斑等、治療で残った身体的な不都合はいろいろあります。 でもどれも小さいことだと今は思っています。なんといっても、生きていられるだけでありがたいのですから。 病室で布団にくるまって苦痛を耐え忍んだり、生死をさまよったりした日々のことを思うと、命があって、自分の家で家族と過ごせること、当たり前のように明日が来ることが、本当にありがたいと思って生活しています。
■がんになる前と同じ体を取り戻す必要はある? 入院期間が長ければ長いほど、体力が回復するのには時間がかかります。なかなか自分が思ったようには回復しません。 初期の固形がんで、手術のみの治療で比較的短期間で退院できた場合は、体力面のダメージもそれほど大きくはないかもしれません。しかし、悪性リンパ腫や白血病のような血液がんで、半年を超えるような長期間の入院で、大量化学療法(通常の化学療法よりもはるかに高い用量の抗がん剤を用いて行う治療)や造血幹細胞移植などの強い治療を受けると、体力や内臓へのダメージも大きくなります。
2回目のがんである悪性リンパ腫の治療を終えて退院したとき、自分の脚力だけでは床から立ち上がれなかったことに衝撃を受けました。そこから、家の周りの散歩や、ちょっと遠くの公園までのウォーキングなどのリハビリで、体力を回復するよう努めました。 しかし、思ったようには回復しません。筋力が失われただけでなく、強い抗がん剤治療や移植治療などで肝臓や腎臓など内臓の機能も影響を受けています。体力回復のペースはゆっくりでした。
がんばってご飯を食べても、入院中に10キロ減った体重は全然増えません。体重が増えないと、体力も筋力もつきません。 当時は早く会社に戻りたいという気持ちばかりが先行して焦っていました。でも結局、病気になる前の体力に戻すのは無理だと気づいて、諦めました。それが最終的には会社を売却するという決断につながります。 虎の門病院の先生からは、「焦らなくても、体重は忘れたころに増えてくるから大丈夫」と言われました。今思い返してみるとその通りで、白血病の治療を経て退院して2年ほどすると、ようやく体重が増加傾向になりました。