【マーメイドS】今年は順当決着の可能性あり 有力馬はミッキーゴージャス、エーデルブルーメ
下位人気が活躍
ヴィクトリアマイルでひと区切りついた牝馬戦線は早くも秋の最大目標に向け、中距離へシフトチェンジする。目標がマイルと2200mという両極端に置かれた牝馬路線は両立が難しい。そのためマイル路線で好走した馬から中距離型へ主役が入れ替わる。その端境期にあるマーメイドSが波乱上等のハンデ戦なのは、そういった事情の影響もある。春の実績は一切関係なく、なんらかの条件戦で一貫して中距離を歩んできた馬でも通用する。春と秋で適性が大きく変化する牝馬路線の転換点であり、そこを敏感につかまえ、馬券的中につなげていこう。 【エプソムカップ2024 推奨馬】上積み、単勝回収率122%で反撃だ! SPAIA編集部の推奨馬を紹介(SPAIA) 今年は京都に舞台を移すが、データとしても非常に特殊な重賞なので、阪神で行われた過去10年分のデータを使用し、臨戦過程に注目しつつ分析を進めることにする。 1番人気【2-1-1-6】勝率20.0%、複勝率40.0%に対し、10番人気以下は【3-2-2-51】勝率5.2%、複勝率12.1%。二桁人気の方が勝利数で上回る特殊なレースだ。6~8番人気が4勝をあげ、完全に人気と結果がひっくり返っている。もはや通常のアプローチでは的中にありつけないレースといっていい。 年齢のデータも4歳【4-4-2-42】勝率7.7%、複勝率19.2%、5歳【5-5-6-56】勝率6.9%、複勝率22.2%、6歳【1-1-1-16】勝率5.3%、複勝率15.8%と確率的には五分に近い。回収値で見ると、4歳の単勝回収値が101と高く、21年10番人気シャムロックヒルなどが勝利。6番人気以下に限ると【3-1-0-24】勝率10.7%、複勝率14.3%。人気薄を狙うならまずは若い4歳に注目しよう。
適性を感じる上位人気候補
今年は重賞ウイナーのミッキーゴージャス、コスタボニータ、ラヴェルが出走予定。なかでもミッキーゴージャスは2走前に愛知杯を勝ったばかり。大阪杯こそ14着に敗れたが、2000m4勝、京都芝2000mは3勝クラス修学院Sを勝ち、オープン入りを決めた舞台。普通の重賞であれば、まずは最有力だろう。 前走GⅠは【0-0-1-7】複勝率12.5%と特殊な重賞らしく成績不振。とはいえ、その要因はヴィクトリアマイルの【0-0-1-6】。マイルから中距離へのシフトはすんなりいかない。それなら大阪杯14着ミッキーゴージャスをこのデータに当てはめるのは危険だろう。一貫して中距離を歩んでおり、ここもなんら違和感なく流れに乗れる。問題はGⅠ後の体調とハンデ。条件戦からの格上挑戦も多く、その分ハンデは必ず重くなる。上下差が結果にどう出るか。荒れる重賞とあおるほど、確実に人気になるミッキーゴージャスが怖くなる。 マーメイドSの特殊性を象徴するのが前走3勝クラス【7-3-1-48】勝率11.9%、複勝率18.6%だ。10年で7勝は大きい。その着順内訳は1着【1-1-1-7】勝率10.0%、複勝率30.0%、2~4着【5-2-0-17】勝率20.8%、複勝率29.2%。必ずしも条件戦を突破した馬とは限らない。惜敗組の成績がよく、前走パールSのジュリアバローズ、インザオベーション、アグラシアドは面白い。もともと前走パールSは【5-1-1-16】と相性がいい。まして今年は同舞台だ。 今年のパールSはスローペースの瞬発力勝負になり、5着まで0.1秒の接戦だった。アグラシアドはスローを後方から差して4着。もう少し流れる重賞で適度に時計がかかる馬場なら脈がある。 3勝クラス勝ち馬の成績も決して悪くはない。福永祐一厩舎で川田将雅騎手が騎乗予定のエーデルブルーメは過剰人気のきらいもあるが、楽しめそうだ。前走が3勝クラスの2000mなら【2-1-0-13】勝率12.5%、複勝率18.8%。エーデルブルーメも前走阪神芝2000mで1:58.8を記録。中団から上がり600m33.9秒の末脚で差し切った。流れに左右されにくい脚質は混戦向きだろう。 重賞組では前走福島牝馬S【1-2-2-23】勝率3.6%、複勝率17.9%に注目。1着【0-0-0-1】、2、3着【1-1-0-4】、4、5着【0-0-0-5】、6着以下【0-1-2-13】で惜敗馬か大敗した馬か。 1着は大半がヴィクトリアマイルに向かうため、データ自体が少なく、コスタボニータは判断できない。かつてはマイルか広いコースの1800m戦に強かったが、昨年暮れディセンバーSからコーナー4回の1800m~2000m戦で2、3、5、1着と安定してきた。年齢を重ね適性が変わってきており、今なら京都芝2000mも悪くない。今年は実績馬に適性を感じる馬が多く、波乱前提で入るのは危険かもしれない。特殊なデータに踊らされすぎないようにしよう。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳