負債2億円から年商8.5億へ大躍進 沖縄県民のソウルフード「沖縄天ぷら」店の多角化戦略
天ぷらは、日本人だけではなく外国人にも人気の和食の定番です。高級店で食べるイメージがありますが、南国・沖縄では「沖縄天ぷら」をおやつ感覚で食べる食文化が根付いています。 その沖縄天ぷらを沖縄県内で年間360万個販売しているのが「上間フードアンドライフ」(沖縄市)です。元々は“街の弁当屋”でしたが2009年に法人化。当時、2億円の負債を抱えるなど、波乱な状態での出発でしたが、新規事業の立ち上げなどで今や年商8億5千万円の企業に成長しました。 現在同社のかじ取りを担うのは、2021年4月に2代目社長に就任した上間園子社長です。見据える先は中小企業(資本金総額5千万円以下または従業員数100人以下)としては沖縄県初となる東証グロース市場への上場です。自身がトランスジェンダーであることも公表した上間社長の経営理念に迫ります。
【上間園子(うえま・そのこ)】 株式会社上間フードアンドライフ代表取締役社長 1986年生まれ。沖縄県うるま市出身。 両親が経営する上間弁当天ぷら店に2007年に入社。 2009年、法人化に伴い副社長に就任し、コンビニエンスストアとの業務提携などのプロジェクトリーダーを務めた後、2021年4月に社長へ就任した。 同時に自身がトランスジェンダーであることを公表。
天ぷらはおやつ感覚のファストフード
上間フードアンドライフが運営する「上間沖縄天ぷら店」のルーツは、沖縄県石垣市出身で、漁師だった上間さんの祖父・喜仁さん(故人)が沖縄の復帰前、沖縄市中央のゴヤ市場で開いた刺し身屋でした。余った刺し身を天ぷらにしたところ、ヒット商品となり、刺し身屋から天ぷら屋に変わりました。その後、親族が複数にのれん分けして、上間さんの両親も2001年に同市登川に出店しました。
上間 「本土の人は天ぷらに塩や天つゆをつけて食べますが、沖縄天ぷらは分厚い衣に味がついているので何もつけずに食べられます」 具材は魚やイカ、エビといった定番はもちろん、モズクやサツマイモなど沖縄ならではのものも取り扱っています。 作り方は、小麦粉に卵と“企業秘密”の調味液を入れた「バッター液」を作り、高温の油でさっと揚げた後、さらに2回揚げます。そうすることで衣に包まれた食材が蒸された状態になり、フワっとした食感が楽しめるのです。 「本土の天ぷらはマツタケ、エビといった高級な食材をたしなみますよね。沖縄天ぷらは衣をおやつ感覚で食べる料理として発展してきた歴史があり、むしろファストフードに近いです。冷めてもおいしく食べられるように衣にも工夫をしています」