馬に時差ボケがないのはなぜか
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(12月22日放送)に調教師の矢作芳人が出演。競馬における調教師の仕事について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。12月18日(月)~12月22日(金)のゲストは調教師の矢作芳人。5日目は、馬の長距離移動と競馬の魅力について― 黒木)2023年8月、北海道・真狩村に矢作さんがプロデュースされた外厩施設「真狩サマーステーブル」が誕生しましたが、どんな施設なのですか? 矢作)大きな括りで言うと牧場です。自分が管理している馬全部を栗東の厩舎に入れることはできないので、夏の間、北海道の涼しい気候のなかでトレーニングするための施設です。 黒木)馬は夏と冬ではどちらが得意なのですか? 矢作)圧倒的に冬が得意です。寒いのが得意で、暑さには弱いです。 黒木)春のG1が終わって、秋のG1が始まるまでの間ということですか? 矢作)そうですね。夏場はローカル競馬と言って、新潟や福島、北海道の函館や札幌で競馬が行われます。その函館・札幌で出走する馬をここに集めるのです。 黒木)関西から北海道への移動はトラックですか? 矢作)トラックです。 黒木)その間、馬の体調管理はどのように行うのですか? 矢作)馬はずっと立っているのですが、最近のトラックは高性能でサスペンションもよく、エアコンでの温度管理もいいので昔と比べて環境がよくなりました。 黒木)ストレスが掛からないように、ということですか? 矢作)それでも我々の本拠地である栗東から札幌競馬場までは、丸1日掛かりますし、フェリーにも乗ります。管理は大変と言えば大変です。
黒木)海外に連れて行くときは、もっと大変ですよね。どのように連れて行くのですか? 矢作)貨物便コンテナのようなところに2頭入れます。飛行機のなかでの空調管理など、いろいろと気を遣っていただいています。その代わり高いですね。 黒木)馬専用の飛行機なのですか? 矢作)貨物機のいちばん前に馬を乗せてもらっています。 黒木)飛行中は馬の状態を見ることはできませんよね? 矢作)離着陸以外は近くで見ることができます。離陸と着陸のときは、人間は座ってシートベルトを着用する必要がありますが。 黒木)空の上に行ってからはお世話できるのですね。 矢作)そうですね。輸送中は空の上で点滴をしたり、水を飲ませたり、いろいろなものを食べさせたりしています。 黒木)移動は大変ですね。 矢作)馬はどこに連れて行かれるのか、わかっていないと思うので。 黒木)伝え方はどうするのですか? 矢作)「遠足に行こうね」という感じで言います。 黒木)アメリカに行こうね、サウジに行こうね、とか。 矢作)ただ幸い、人間のような時差ボケが馬にはないのです。 黒木)どうしてわかるのですか? 矢作)馬には昼と夜との区別があまりなくて、立ったままでもうつらうつらと寝ていることが多いので、それほど時間の感覚がありません。時差ボケがないだけでも、人間より元気です。 黒木)競馬の魅力は一言で言い尽くせないとは思いますが、最後にお願いします。 矢作)いまの日本競馬は、世界的にもトップレベルです。それに馬券というギャンブル要素も加わって、エンターテインメントとして非常に優れていると思います。ファンの方には、サラブレッドの美しさを見ていただきたいです。サラブレッドという芸術品を見るような気持ちで、それに賭けていただけたら、我々にとっても最高です。