「寝てても覚めても野球のことを…みたいなのは一切ない」柴田勲さんは“エンジョイ野球”先駆者
巨人球団創設90周年記念の連続インタビュー「G九十年かく語りき」の第5回は、主に1番打者としてV9に大きく貢献した柴田勲さん(80)の登場だ。日本初の本格的なスイッチヒッターは、代名詞とも言える赤い手袋とともに、縦横無尽にグラウンドを駆け巡った。時代の先駆者だった柴田さんが振り返る「喜怒哀楽」とは―。(取材・構成=湯浅 佳典、太田 倫) 取材後記 昭和ど真ん中の世代なのに、柴田さんからは汗と涙の香りがしない。「血のにじむような努力? ないない。寝てても覚めても野球のことを考えて…みたいなのは一切ない。努力しましたなんて、言うことじゃない。苦しくやったら野球は難しくなっちゃうから」。元祖スイッチヒッターは、野球に取り組むスタンスでも時代を先取りしていた。 超のつくイケメンだった若い頃、川上監督から「酒、飯、オンナ」は人におごられるなと厳しく申しつけられていた。「こいつはアブないと思われていたんだろうね。フッフッフ…」。過去の恋愛から、例のセーターへの悔恨まで、嫌な顔ひとつせず語る器の大きさ。“銀座の盗塁王”に多くの人がハートを盗まれた、その理由の一端に触れた。(野球デスク・太田 倫) ◆柴田 勲(しばた・いさお)1944年2月8日、横浜市生まれ。80歳。法政二時代、エース兼主力打者として60年夏、61年春の甲子園で連続優勝し、62年に巨人入り。この年6試合で0勝2敗に終わり、翌年から外野手に転向。俊足の1番打者として盗塁王を6度獲得。通算2208試合に出場。2018安打、708打点、194本塁打。打率・267。通算盗塁数579個は現在もセ・リーグ記録。
報知新聞社