「東京駅」で列をなす花嫁たち…中国人カップルも激増中「ウェディングフォトの聖地」の実態
無許可撮影が横行する背景とは
さて、東京駅前で撮影してもらうにあたり、業者にはいくら払えばいいのだろうか。ネットを検索してみると、ある業者では10万円前後で撮影可能という。スマホを使った撮影プランを設けている業者もあり、数万円と激安である。ただ、いずれにせよこれらのプランには、大きな問題がある。基本的に無許可で撮影を行っているとみられる点だ。 この日、写真を撮影している男性カメラマンに道路使用許可書など、何らかの許可書をもっているのかと聞いたところ、「許可ですか? 僕はただ依頼を受けて撮りに来ているだけなので、詳しいことはわかりません」と言われてしまった。 いったいなぜ、無許可の撮影が横行しているのか。それはひとえに、「許可を取るのが面倒くさい」からだ。シンプルにその一言に尽きる。屋外で撮影を行う場合、天候に左右されることが多い。手間をかけて書類を書き、警察署に道路使用許可の申請をしても、その日が雨にでもなるとすべての計画が流れてしまうためである。 したがって、ゲリラ的な撮影になってしまうのだ。ただ、無許可の撮影はそれなりにリスクを伴う。撮影中に警察官がやってきて職質を受けたり、なかにはウェディングドレスのまま連行されてしまったりする花嫁もいるそうだ。いくら映える写真が撮影できても、これではせっかくの思い出が台無しになってしまうではないか。
公式の撮影プランもあるが、高い
さて、東京駅の中には「東京ステーションホテル」というラグジュアリーなホテルがあることをご存じだろうか。東京駅開業の翌年、1915年にオープンして以来、川端康成、内田百閒、江戸川乱歩、松本清張など著名人も多く宿泊した歴史を誇る。このホテルにも当然のようにウェディングプランがあるが、なんと東京駅の真正面で、“公式”に撮影ができるのだ。 東京駅の正面に立っている関係者に話を聞いてみたところ、駅舎の間近でもし撮影をしていたら、それは東京ステーションホテルで結婚式を挙げたカップルなのだという。つまり、公式である。そして、行幸通りで撮影している業者はほぼ無許可なのだという。万が一こちらのエリアまで撮影にやって来たら、排除しなければいけないと語っていた。 ちなみに、結婚式の情報サイト「Wedding Park」によると、東京ステーションホテルで結婚式を挙げた場合、60名で401~463万円が相場という。もちろん、招待人数や規模によって変動すると思われるが、なかなか庶民には手が届かない価格帯である。公式を選ぶか、ゲリラ撮影を選ぶか。悔いのない選択をしたうえで、結婚式の思い出を残してほしいものである。
ライター・山内貴範 デイリー新潮編集部
新潮社