"複雑なのに効果は微妙..."岸田政権の「4万円減税」を元・国税調査官が徹底解説!
2023年11月、岸田政権は夏のボーナスにあわせて今年6月から所得税と住民税あわせて4万円を減税するなどの経済対策を閣議決定した。この施策は「増税メガネ」と揶揄される岸田首相のウルトラCか、それとも単なるパフォーマンスか......? 元・国税調査官の松嶋洋氏に解説してもらった。 定額減税と低所得者支援のイメージ図 * * * 岸田政権は、所得税と住民税あわせて一人当たり4万円を減税する方針を固めました。減税の理由として、岸田首相は「デフレ脱却を確実にするため」と説明しましたが、正直、効果や根拠には疑問符がつきます。 昨年の日本経済は、ロシアによるウクライナ侵攻を契機とした原油・天然ガス価格高騰によりインフレになりました。しかも、物価上昇が景気拡大をともなわない"悪いインフレ"です。こういう状況では、生活を支援するために抜本的な景気対策が必要になります。 しかし、今回の減税はあくまで時限的だといいます。財政負担を考慮してのことだとは思いますが、不十分感は否めません。 ■中身が薄いワリに複雑な減税策 では、肝心な減税の内容はというと、端的に言って「中身が薄いうえに複雑」。その詳細をざっと解説していきます。 まずは住民税非課税世帯、つまり所得が低く所得税も住民税も課税されていない人には、「重点支援給付金」として7万円が給付されます。一方、会社員や個人事業主など住民税を課税されている人には、所得税3万円と住民税1万円の計4万円が減税されるという仕組みです。 しかし、所得税と住民税の年間納付額が、減税額の4万円未満という世帯は約900万人いるとされています。実は、この層こそが物価高によってもっとも生活に困っている層で、こうした定額減税を満額受けられないと認められる層には、別途1万円単位で給付金を支給する方針の模様です。減税だけでなく給付金が支給されることもあり、制度が非常に複雑になっています。 また、年収2000万円超を対象外とするという所得制限を設ける予定です。減税の目的は、物価高対策だったはず。うがった見方かもしれませんが、これでは「お金に余裕がある人はインフレから救う必要がない」と言わんばかりです。 私は常々、「岸田首相はいつも何かを隠し持っているな」と思ってしまいます。児童手当を支給すると思ったら扶養控除が縮小、住宅ローン控除を拡充すると思ったら認定住宅という条件付き。のっぴきならない事情があるのかもしれませんが説明が不十分なので、何かしらの思惑があるのではないかと思われるのは当然です。 「今回の減税は6月に行われる選挙に向けたパフォーマンスだ」「『増税メガネ』のイメージを覆したいだけだ」。そんな声が上がるのも、仕方のないことではないでしょうか。 ■「税収増の還元」はたったの4万円