トランプ次期大統領とプーチン大統領の電話協議、ロシアが否定 「完全な虚偽」
ロシア大統領府(クレムリン)は11日、アメリカのドナルド・トランプ次期大統領がロシアのウラジーミル・プーチン大統領と電話で協議し、ウクライナでの戦争をエスカレートさせないよう警告したとのメディア報道について、その内容を否定した。 両者は7日に電話協議をしたと、米紙ワシントン・ポストが10日に最初に報じた。 トランプ氏はこの電話で、ヨーロッパにおけるアメリカの軍事面での広範な存在についても、プーチン氏と話をしたとされる。 これについてクレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、「完全な虚偽で、純粋なフィクションだ。要するに単なる誤報だ。会話はなかった」と述べた。 一方、トランプ氏の広報ディレクターのスティーヴン・チャン氏は、「トランプ大統領と世界の他の指導者との私的な電話についてはコメントしない」とBBCに説明。ただ、各国指導者らがトランプ氏と接触を図り始めているとした。 ■ウクライナ支援をめぐる観測 トランプ次期大統領は、ウクライナで3年近く続く戦争を終わらせると宣言している。ただし、その方法は明らかにしていない。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はこれまで、国土をロシアに譲る気はないと強調するとともに、アメリカの援助が無ければウクライナは戦争に負けると述べている。 こうしたなか、クレムリンのペスコフ報道官は10日、アメリカの次期政権から「前向きな」シグナルがうかがえると、ロシア国営メディアに話した。 一方で諸外国からは、トランプ氏がウクライナを見捨てることはないとの見方も出ている。イギリスのジョン・ヒーリー国防相は、アメリカが「イギリスなどの同盟国とともに、プーチンの侵略に打ち勝つため、必要な限りウクライナを支え続ける」ことを期待すると述べた。 欧州連合(EU)のジョゼップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表は10日、ウクライナを訪問した際に、戦争を終わらせるには、維持可能な形の合意が必要だと強調。「この戦争は終わらりにしなくてはならない、だからどんな方法だろうとすぐに終わらせよう、と主張する人々に警告する。どんな方法なのか、は重要だ」と述べた。 アメリカのジェイク・サリヴァン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、ウクライナから手を引けばヨーロッパがさらに不安定になると、ジョー・バイデン大統領がトランプ次期大統領に説明するだろうと述べた。 ドイツのアナレーナ・ベアボック外相は11日、アメリカが権力移行期に入るのにつけ込んで、ロシアがウクライナで優位に立とうとする可能性があると警告。「春まで様子を見る余裕はない。今がまさに、プーチンが待ち望み、狙っていた移行期だ」とし、ウクライナ支援を拡大するよう、自国およびEU加盟国に呼びかけた。 ■ロシアの空爆で死傷者 ウクライナ東部ドネツク州のヴァディム・フィラシキン知事は11日、戦争の前線近くのクラホフ貯水池のダムがロシアの攻撃によって破損したと発表。増水によって、ヴォウチャ川沿いの集落が「脅かされる恐れがある」と注意を求めた。ロシアは、ウクライナ側に責任があるとしている。 ロシアとウクライナは9日から10日にかけ、双方の領土に対し、開戦以来最大規模のドローン(無人機)攻撃を実施した。 ロシア国防省は、6州の上空でウクライナのドローン84機を迎撃したと発表。一部のドローンはモスクワに接近し、市内にある3つの主要空港の発着便が迂回(うかい)を余儀なくされたとした。 一方、ウクライナ空軍は、ロシアが9日夜にドローン145機をウクライナ各地に向けて発射したが、そのほとんどを迎撃したと発表した。 ウクライナでは11日、ロシアによる空爆で少なくとも6人が死亡、21人が負傷した。ゼレンスキー氏はソーシャルメディア「X」への投稿で、「毎日、毎晩、ロシアは同じ恐怖を放っている」とし、ロシアの侵略を阻止するために「より強力な世界的支援」と、さらに多くの武器が必要だとした。 一方のロシアは、西部クルスク州とベルゴロド州の近郊で、ウクライナのドローン13機を破壊したと発表。死者は出ていないとした。国防省は、ウクライナ北東部ハルキウ州のコリスニキウカ村を、ロシア軍が占領したと発表した。 米シンクタンク「戦争研究所」のデータをAFP通信が分析したところ、10月にロシアが掌握したウクライナ領の面積は、2022年3月以降で最大だった。 (英語記事 Russia denies Trump call with Putin urging restraint in Ukraine)
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