農作物被害は158億円 ベテラン狩猟者と初心者の融合で、解決目指す
秋から冬の猟期に活動
カリラボは2019年10月に創業した。サービス内容はおもに三つ。地元のベテラン猟師たちと一緒に狩りをするカリナビ、動物を捕獲するわなを共同で仕掛けるワナシェア、シカやイノシシ肉のバーベキューなどを楽しみながら狩猟を身近に感じてもらうイベントの開催だ。 このうち、カリナビとワナシェアは、基本的に狩猟免許を取得している人に向けての会員制のサービスだ。カリナビは猟期である11月15日から2月15日まで、ワナシェアは3月15日まで活動する。 カリナビは、武甲猟友会が週末や祝日におこなう巻き狩りに参加させてもらう。ただし、銃を使うため、安全面から、カリラボの参加者は吉田さんを含めて最大で4人にしている。 「カリナビやワナシェアの会員は、埼玉県の都市部や東京に住んでいる人がほとんどで、年代は30代から60代まで幅広いです。事業スタートから特に宣伝をしなくてもたくさんの問い合わせをいただきました。猟場探しに苦労していた人、技術を学びたい人が多いです」 吉田さんは東京都世田谷区と横瀬町の2拠点生活をし、平日は都内のIT企業に勤めている。 狩猟事業に取り組むきっかけは、2017年に横瀬町に別荘を買ったことだった。週末を別荘で過ごすなかで、近くを通りがかった武甲猟友会の人たちを見かけ、思わず追いかけていった。そこで前年に狩猟免許を取得し、猟銃も所持していることを伝えると、「今度、巻き狩りに来いよ」と誘われた。
それから1カ月もしないうちに、実際に参加することができた。継続的に猟に参加するようになって実感したのは、狩りの楽しさだけではなかった。野生動物による農作物や山林の被害が想像以上に多いこと、駆除の担い手である猟友会員が高齢化していることなど、狩猟をめぐる課題をひしひしと感じるようになった。 そこで、狩猟免許があるのに狩猟機会のない猟師と、横瀬町をつなげることができれば、双方にとってプラスになるのではないかと考えた。 「実際にカリラボの説明会を開いてみると、参加したいという人がたくさんいました。巻き狩りへの参加や設置したわなの見回りで、外から横瀬町にやってくるきっかけになりますし、何よりも地域の獣害対策に結びつきます。事業収益を得るよりも、このような貢献ができることにおもしろみを感じました」