給食に郷土の旬 じゅんさい汁 秋田県三種町
「つるつるでつかめない!」 7月1日、秋田県北西部の三種町。周囲に200を超える沼が点在する町立森岳小学校で、旬のジュンサイを使ったじゅんさい汁が給食に出た。 同町が国内有数の生産量を誇るジュンサイは池沼に自生する水草の一種で、ゼリー状の膜に覆われていて独特のぬめりがある。汁に浮かんだジュンサイを挟もうと悪戦苦闘する児童の箸の先を、3センチほどの新芽がするりとすり抜けていった。 町内8小中学校855食の給食にジュンサイ計51キロを使用し、鶏肉や豆腐と一緒に煮たじゅんさい汁の他、ジュンサイを県産リンゴとあえたデザートも並んだ。旬の5月から7月までの間、汁物を中心に数回、給食で提供される。 母親がジュンサイ農園で働いているという6年生の川村くるみさん(11)も「汁物でも菓子でも何にでも合う」と太鼓判を押す。 この日は生産者らが作る「三種町森岳じゅんさいの里活性化協議会」が制定した「ジュンサイの日」。英語で6月を意味する「ジューン」と31で「さい」と読ませ、6月31日にしたかったが、6月は30日までしかないので7月1日になった。収穫の最盛期とも重なる。 言葉遊びのようだが町はジュンサイのPRや生産維持に懸命だ。町商工観光交流課によると、町内では約50年前、減反政策による米の転作作物として、水田を利用したジュンサイ栽培が盛んになった。生産量はピークの1991年に1260トンだったが、昨年は210トンまで減少。農家数は30年前の5分の1の127戸になった。 町はジュンサイの出荷量に応じて助成金を交付する他、沼の改良経費を補助。県内外に広めるため2014年から「世界じゅんさい摘み採り選手権大会」を始め、今年は全国から定員の約3倍の応募があった。「ジュンサイが好きで参加するリピーターが多い」と同課。郷土の旬の味覚を守ることは町のにぎわいにもつながっている。
日本農業新聞