少子高齢化、危機的な水準に 〝脱却〟への覚悟注視<衆院選の争点・未来>
15日に公示された衆院選は、27日の投開票まで12日間の選挙戦がスタートした。「未来」に不可欠な少子高齢化対策に、政治はどう対峙(たいじ)するのか。有権者が一票を託す上で判断材料となる争点をクローズアップする。 【グラフでみる】年間出生数と合計特殊出生率の推移 ■子育て環境不十分 少子高齢化は危機的な水準に達している。1人の女性が一生のうちに産む子供の数の指標となる「合計特殊出生率」は令和5年に1・20となり、統計開始以来の最低を更新。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、人口が現在の7割まで減る2070(令和52)年には、総人口に占める65歳以上の割合が38・7%へと上昇すると予測されている。 国民生活に大きな影響が出ることは明らかだ。公的年金制度では、現状のままでは将来世代の受給額が低下するとの予測もある。政府は「人生100年時代」をうたい、70歳までの就業機会の確保を呼びかけている。 一方、子育て環境が十分に確保されているとはいいがたい。政府は「2030年代に入るまでが少子化傾向を反転するラストチャンス」として対策を加速させているが、心もとない。「未来」を支えるため、子供を増やし、高齢者の潜在力を最大限生かせる社会づくりに挑む覚悟が問われる。 ■「仕事続けられる支援」 第1子が生まれたばかりという東京都江戸川区の会社員、芥川沙季さん(28)は「子育てにかかる費用を考えると、厳しいのは物価高。賃金アップにつながる政策を求めたい」と話す。 高額となる教育費負担は第2子以降の出産をためらう一因とされる。令和7年度からの大学無償化の対象も3人以上の多子世帯に限られるため、「1人目から手厚い支援をしてくれる方に投票したい」と期待を込めた。 幼稚園と小学生の子供2人を育てる新宿区の主婦、鈴木美佳さん(45)は子育てのため、泣く泣く退職を決断した経験がある。「仕事を続けられる支援があれば」と、育児と両立可能な労働環境づくりを求めた。 一票の行方は高齢者にとっても生活をかけた選択となる。建築設計コンサルティングに携わる新宿区の男性(84)は「働くのが好きだからというのもあるが、生活費としてお金が必要だから」と現役を続ける実情を明かす。「年金は目減りしている。これから受給する世代のためにも上がってほしい」と公的年金制度の改革を求めた。(堀川玲)