パリ行きを決めた「水球日本代表」を支える欧州組の一人、新田一景がオランダで目指すCLと五輪出場「レベルアップを感じてます」
「東京オリンピックのときは、まだ自分の実力が伴ってませんでした」
7つあるポジションのうち、「ゴールキーパーとストライカー以外、自分はどこでもプレーできるユーティリティが武器。日本でこんなにマルチなのは自分ぐらいです」と言う新田は、UZSCでは左サイドでプレーする。右利きの新田をここに置くということは、シュートを撃つことが求められている。 「左サイドでプレーする理由は、やっぱりゴール。目立たないと次のステップに繋がらないんで。外国人選手は、すごく点を取るか、それとも身体を張ってチームのために相手の反則を奪って『退水(20秒間、7人対6人のパワープレー。勝負の分け目になる)』を取ってくれるか――というのが肝になる。だから自分は今、左サイドで点を取る作業をしています。得点王、狙ってますよ」 10月下旬、新田はUZSCを一時離脱して、ブルボンKZの一員として日本選手権に参戦した(ブルボンKZは3位)。 「日本に帰ると、視野が広がったのを感じて、より周りを見ることができました。オランダの選手は体が大きいから、前から寄せられただけでプレッシャーを感じます。日本だとそのプレッシャーが弱まるので、落ち着きがだいぶ違ってきます。また、今年は水球日本代表で世界水泳、アジア大会、オランダではホーム・アンド・アウェーのリーグ戦を戦っているので、公式戦をやる機会が急に増えました。自分がレベルアップしたことを感じてます」 アジア大会を好成績で終えUZSCに戻ってくると、チームメートは新田のことを「オリンピアン! オリンピアン!」と言って称えたという。苦笑交じりに新田は「まだ選考段階なんですけどね」と言った。 「もちろん、オリンピックに出たい。その思いは強い。しかし今はまだオランダにいるので、ここでレベルアップしたい」 東京オリンピックは怪我のため不出場。前回は相当悔しい思いをしたはず。千載一遇の思いでパリ・オリンピックを待ちわびているのかと思いきや、新田は目の前のことに重きを置いていた。 「東京オリンピックのときは、まだ自分の実力が伴ってませんでした。怪我をしたのは確かですが、怪我がなかったとしても代表に選ばれなかったかもしれません。みんなが『オリンピックは一味違う』と言います。その舞台を人生で一度は経験したい。だけど、今は自分に矢印を向けている。最近、力が劣る相手に対して無意識に慢心が出てしまって、自分のプレーの質が落ちることがある。すべての試合が重要だと認識して、僕はプレーしないといけない。だから今はあまりパリ・オリンピックのことを意識していません」
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