パリ行きを決めた「水球日本代表」を支える欧州組の一人、新田一景がオランダで目指すCLと五輪出場「レベルアップを感じてます」
水球日本代表・新田一景インタビュー【前編】
10月、水球日本代表『ポセイドン・ジャパン』は地元中国との決勝戦を11対7で勝利し、53年ぶりのアジア大会優勝を果たした。2018年大会の決勝戦ではライバルのカザフスタンに第3ピリオド途中まで7対3とリードしながら、7対8という屈辱的な大逆転を許して優勝を逃しただけに、嬉しさひとしおの戴冠だった。 また、アジア大会を制したことにより、水球日本代表の3大会連続オリンピック出場が決まった。84年ロス・オリンピックから32年の長きに渡り檜舞台から遠ざかっていた日本代表は、確実にレベルアップしている。 2010年、新潟県柏崎市に水球クラブチーム『ブルボンKZ』が発足し、全日体大(現キングフィッシャー74)との切磋琢磨が生まれたこと。多くの企業の支援によって選手たちがより水球に集中できる環境が整ったこと。そしてトッププレーヤーたちが水球の本場、ヨーロッパのクラブでプレーし個々のレベルが向上したこと――。そういったことが日本水球復活の背景にあるらしい。 『日本水球界・欧州組』の一人、新田一景(25歳)はブルボンKZとUZSC(オランダ・ユトレヒト)でプレーする日本代表選手だ。 「高校(金沢市立工業高)2年生ころからサッカーが好きになり、その影響を受けて『水球選手として自分もヨーロッパでプレーしたいなあ』と思うようになりました。また、2016年にU18日本代表としてアジアユース(優勝)、世界ユース(11位)に出たことも大きい。アジアユースでは大事なところでシュートを外してしまって『アジアでも自分は通用しないんだ』と痛感しました。世界ユースでも物足りなさが残った。『国際試合で活躍するために、自分は海外に出ないと』と思いました」 新潟産業大時代にはモンテネグロとオーストラリアで、ブルボンKZ加入後はイタリアで武者修行を重ねた新田は、次なるチャレンジの場を探していた。2022年日本選手権でブルボンKZの一員としてプレーしたオランダ人選手ルーカス・ヒーレン(ドイツ代表を選択)に「俺、ヨーロッパでプレーしたいんだよね」と相談すると「それならば自分がプレーしていたUZSCに来れば良い」と移籍への流れを作ってくれた。2023年、福岡で開催された世界水泳で来日したアンディ・フーペルマンUZSC副会長の誘いもあって、今季から新田はUZSCでプレーすることになった。 「外国人枠がないのがエールディビジ(オランダ水球1部リーグ)の特徴です。UZSCにはハンガリー、ギリシア、そしてスロバキア人が2人いる。オランダは欧州で8番目くらいに強い中堅国。エールディビジは水球選手にとって登竜門のようなところで、ここからステップアップしていく。エールディビジにはチャンピオンズリーグ出場枠がなく、優勝するとユーロカップ――サッカーのヨーロッパリーグのようなものに出ます。自分はチャンピオンズリーグでプレーするためにヨーロッパに来ました。まず今季はUZSC(現在首位)で優勝してユーロカップの出場権を獲得するのが目標です」
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