「発汗が増えた」「情緒が不安定に」更年期症状と判断が付きにくく怖い病気とは…病院を受診するべき症状を医師が解説
◆副腎機能不全 また、更年期症状と間違えやすい病気には、「副腎機能不全」もあります。 副腎とは、腎臓の上にある小さな臓器ですが、そこで作られる副腎ホルモンは、血圧や心臓の機能を維持するなど重要な役割を果たしています。 副腎機能不全とは、本来は細菌やウイルスから体を守ってくれるはずの自己抗体が誤って副腎を攻撃するようになり、副腎ホルモンの分泌量が減ってしまう病気です。その結果、だるさなど更年期症状と共通する症状が出ます。 副腎機能不全は今のところはそれほど多くない病気ですが、現在の医療現場の様子を見ていると、今後増えていく可能性があると私は危惧しています。 なぜなら、近ごろは自由診療やオンライン診療の普及によって、安易にステロイドを処方する医師が増えているからです。 ステロイドとは、もともと副腎ホルモンのひとつで、このホルモンが持つ作用を薬として応用したものです。炎症を抑えたり、免疫力を抑制したりする作用があり、さまざまな疾患の治療に使われています。 しかし、副作用も多いため、使用には万全の注意を払わなければなりません。
◆ステロイドの副作用 じつは副腎機能不全は、ステロイドの副作用のひとつとして起こることがあるのです。 体の外からステロイドを入れると、副腎が「ホルモンがあるから、もう出さなくていいや」と、副腎ホルモンを出す量を減らしてしまいます。 その状態が続くと、たとえステロイドを入れなくても、副腎にサボりグセがついてしまい、ホルモン分泌量がもとに戻らなくなってしまうのです。 ステロイドはスポーツのドーピングでもよく使われる薬です。ステロイドを使用しているボディビルダーは、心血管疾患の発症や早期死亡のリスクが高い可能性があると報告されています。本当はかなり危険な薬なのです。 ステロイドのメリットとデメリットを押さえて、適切に処方するのなら問題ありません。しかし、ほかの薬の選択肢がある花粉症の治療にまで安易にステロイドを使うようになっていることに、私は警鐘を鳴らします。 いずれにせよ、下表のような不調が出た場合は、更年期症状と早合点せず、一度きちんと受診するようにしましょう。 ※本稿は、『最新予防医学でここまでわかった 50歳からの病気にならない最強の食生活』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。
森勇磨